第四十一話 人と城その三
[8]前話 [2]次話
「勝てぬやもな」
「それがしもそう思いまする」
「やはりそう思うか」
「殿は織田殿を片腕にと考えておられますな」
「長尾虎千代と共にな」
「殿の両腕に」
「わしは己の目に自信がある」
それも絶対の、というのだ。
「ならばな」
「織田殿は強く」
「今川殿を破り。下手をすれば」
「天下をですか」
「そのうち伊勢や志摩を手に入れてな」
そうしてというのだ。
「美濃もやも知れぬ」
「殿がやがてと考えておられる」
「上洛の足掛かりにな、しかしな」
それがというのだ。
「織田家にじゃ」
「先にですな」
「美濃を取られるやもな」
このことも危惧しているのだった。
「どうにも」
「そうなれば」
「厄介なこととなる」
晴信は憂慮と共に述べた。
「そうなる前にな」
「美濃一国を手に入れる」
「そう考えておるが」
「では」
「まずは信濃をじゃ」
今攻めている国をというのだ。
「抑える、しかしな」
「信濃を手に入れて」
「わしはここで気になることがある」
晴信は無意識のうちにだった。
北を見てだ、山本に述べた。
「越後じゃ」
「長尾家ですな」
「長尾虎千代じゃ、あの者がじゃ」
まさにと言うのだった。
「我等とことを構えるとなると」
「その時は」
「厄介なこととなる」
「その時は」
山本は晴信にすぐに答えた。
「信濃の北、越後の喉元にです」
「城を築くか」
「海津にです」
この地にというのだ。
「城を築き」
「そしてじゃな」
「はい、そのうえで」
「越後からの敵を防ぐか」
「そうしましょうぞ、あの地に城を築けば」
そうすればとだ、山本は晴信に話した。
「越後からの敵は防げます」
「そうじゃな、では」
「その時はそうしましょうぞ、ただ」
「それでもか」
「若しもです」
山本は晴信に危惧する顔でこうも言った。
「越後の軍勢が海津を攻め落とすか攻めずさらに来れば」
「信濃に入ればか」
「その時はです」
「激しい戦を覚悟せねばならんな」
「そうかと」
まさにというのだ。
「その時は」
「やはりそうじゃな」
「はい、それも何度もとなると」
「長尾家との戦に時を取られてか」
「はい」
そうなってしまってというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ