暁 〜小説投稿サイト〜
緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
最悪と災厄
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
…そろそろ頃合いかな」


呟き終えるか否か、自分は自転車をグラウンド入口に差し掛けたところで飛び降りた。そうして力の任せる限りに、ここから出来るだけのグラウンドの内部へと放り投げる。もうハッキリと、あの大破炎上している自転車の成れの果てが見てとれた。
それを真似るようにして、この自転車も揃いに爆破した。空中で、それも自分のすぐ付近で爆発したものだから、その爆風や残骸とが容赦なく降り注がれていく。それすらも──好都合。

あの珍妙セグウェイを観察しようと何度か振り返った時に分かったのだが、どうやらあのセグウェイは電波操作だけでなく──温度・物体移動センサーによっても、その補足対象の動きを把握しているらしい。UZIや小型スピーカーの他にも取り付けられていることを不思議に思ってはいたが、どうにも見覚えがある。何処かで見たような機械が搭載されていると思ったら、以前、装備科(アムド)で見せてもらったのを思い出せたのは僥倖だったね。

自転車が爆破されたことにより、その爆破された自転車の周辺は温度が急上昇する。あまつさえ、爆破の際に生じた破片も沢山飛び散っている、ときた。奥にはあの大破炎上の果てもある。
読み通りならセグウェイは台座ごと方向転換をし、銃口の向ける対象は自分ではなく、あの木っ端微塵になっている自転車へと向けられるわけだろう──この仮説が、果たして通るだろうか。


「──っ、」


その一刹那に、9mmパラベラム弾の轟音が周囲一帯に鳴り響いた。あの45口径にも匹敵するような、そんな轟音。狂ったように虚空へと銃弾を浴びせ続けるセグウェイは、珍妙と呼ぶよりやはり、狂気としか思えなかった。
UZIが1マガジンを撃ち切るかどうかのところで、ホルスターから44口径のデザートイーグルを取り出す。いつ握っても重厚感があって、グリップが手に馴染まない。

照準をセグウェイに定めるのは簡単なのだけれどね──そう思いながら、グリップを握る手、或いは腕を固定した。静かに引き金を引くと、その動作とは似つかわしくないほどの反動が手を通して全身に巡る。下手に構えると腕が外れそうだ。大口径銃に特有の──例えば44口径マグナム弾の鳴動が、鼓膜を震わせて余韻を生んでいく。それに浸る暇は、無かった。

中枢部分を破壊されたセグウェイは、無機質に佇んでいる。そうしてその背後や傍らから、何処ともなく現れた8台のセグウェイに銃口を向けられているのを理解するまでに、少々時間を要してしまった。しかもご丁寧に周囲一帯を円形に囲まれている。銃で1台ずつ倒していく余裕は……無い。厭な焦燥に駆られながら、大刀契──《緋想》──を抜刀した。

──刹那、知覚の全てが、さながら《緋想》の刀身の如く、明瞭に感じられた。研ぎ澄まされた、視覚、聴覚、嗅覚。一
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ