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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
最悪と災厄
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偵校に居たのか……?
その技量から強襲科の人間と予想したはいいものの、その記憶が正しければ自分は彼女を知らない。勿論、武偵校に居ればすぐにでも噂になりそうな子だから、それが無いということは……。
器用に2丁拳銃を回してホルスターに収めた少女は、今度こそ──依然として険しい顔付きのまま──こちらに向かって飛来してくる。そうして数瞬、自分とキンジを交互に見遣った。何やら思案げな、それでいて物憂げな色を見せている。端麗な容貌には、その表情が酷く似つかわしかった。
ただその面貌が故に、この少女が何をしようとしているのかが、あらかた類推できてしまったことは幸いだろう。その短躯で、どうやら自分たちのうちの1人の
救助
(
セーブ
)
を試みているらしい。1度に2人も救助は出来ない──だからこそ、その目配せがここで意図を発揮したのだ。
そうであるならば──、
「君、こっちのことはいいから、もう1人を何とかして!」
「なっ……、彩斗はどうすんだよ!」
「自分で何とかする! ……ほら君、早く!」
キンジのことは取り敢えずこの少女に任せておくとしよう。せめて自分は自分の出来る限りのことをして、この勢力を分散しなければどうしようもない。このまま追い回され続ければ、体力面で分が悪い人間側の敗色が濃厚だ。短期決戦を仕掛けるしかない。
それを裡面に含ませて、俺は少女にキンジの命運を託したのだから──同時に、少女はそのツリ目がかった
赤紫色
(
カメリア
)
の瞳で睨みつけてきた。小さく頷いて応じてやる。
自転車は既に武偵校のグラウンド内に差し掛かっており、キンジと渺たる一少女とはそこで離別することになった。ここまで来ればもう、あの2人を気にしている猶予など無いことは、自分がいちばん分かりきっている。背後に聞こえた爆発音と爆風を背で受けながら眼前を凝視した。
紡錘形の異形が結んだ先は、つい先刻のグラウンド内とは打って変わって、武偵校の校門付近だった。背後にあったはずのグラウンドが今は視界の端に掛かっている。大破炎上しているかつての自転車だったものが、黒煙を朦々と上げていた。
振り返って後ろを見ると、セグウェイは未だにUZIの銃口を向けたまま追走してきている。突き放せれば御の字だったが、そんなに上手く事は進まないものだね──と溜息を吐く。
しかし、自分だって今まで何の気なしにセグウェイを観察していたわけではない。そもそも、あの少女と一言二言を交わした時には、その対処方法は既に立案されていたのだから。
不意に、黒煙の臭いが鼻腔を擽った。軽風に靡く前髪が、滲んだ汗のせいで額に張り付いている。それに妙な心地悪さを覚えながら、ふと春の朧気に霞む群青を見上げていた。
然
(
さ
)
も
有
(
あ
)
らば
有
(
あ
)
れ──。
「…
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