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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
序章
二重奏の前奏曲 U
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に虚空を斬り裂いていく。彩斗はそれを易々と《緋想》で両断すると、また攻勢に回ってキンジへとその刀身を向けてきた。
銃弾を一瞬で真っ二つにするなんて──!
改めてキンジは《緋想》そのものの能力に嘆息させられた。このままでは彩斗に銃は効かない。そう判断すると即座にバタフライナイフを開き、せめてもと鍔迫り合いに持ち込む。散った火花がこの空虚に融けるまでが、やけに長く感じられた。
──フルオートで焚かれたマズルフラッシュは、ほんの一瞬で。
銃口から放たれていく銃弾は、全て彩斗の頭部を目掛けて飛来していく。キンジの方が、僅かの差で発砲するのが早かったのだ。
しかし、これは──どうやって対処する? 避けようがないぞ。
相手の動向を窺うしかない。そんな自分の思考力に嘆きながらも、キンジは意識を彩斗に傾注させている。
彩斗は視線を迫り来る銃弾に固定したまま、微動だにしない。その理由が陰陽術だと、キンジには分かってしまっていた。
視線の固定は、範囲の選択。それさえ済ませれば、あとは任意のタイミングで《境界》の展開が可能になる──。
紡錘形として展開されたそれは、銃口から放たれた銃弾をただひたすらに吸い込んでいく。時空間移動術の一種。この境界は時空を繋ぐ働きを持っているらしく、物体の移動手段として最適なのだと──以前に彩斗が言っていたことをキンジは思い出す。しかも、物体にかかったエネルギーは潰えることがないのだから、今回に至っては恨めしい。そんな悪態も、胸の内に吐いた。
「……こんなものかな」
小さく瞬き、何事かを呟いた彩斗はキンジと距離をとりながら片腕を掲げる。刹那、2人の間に存在していた境界が消え、彩斗自身の背後に扇状の境界として再度展開させた。そこから放たれていくのは、キンジが先程発砲した、数多の銃弾。
彩斗はそれを己が手駒にし、攻撃手段へと変えたのだ。敵の攻撃手段を無効化し、自分の攻撃手段として成り変わらせる──それこそ将棋の持ち駒にも似た、最も理想的な方法で。
キンジは耳元に何かが通過する音を聞いた。それが銃弾が飛来した音だと気が付いたのは、ほんの一刹那の後になる。
──試験終了を知らせるブザーの音が、一帯に鳴り響いた。
◇
・如月彩斗:強襲科入試試験、Sランク合格
・遠山キンジ:強襲科入試試験、Sランク合格
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