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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
序章
二重奏の前奏曲 U
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た。

ものの見事に背中がついているので、試験官の言に従えば、これはどう言おうと失格だ。戦闘に私情が混じると宜しくないことも、知識が教科書通りなら教わっていたはずなのだけれど……。
軽くジャケットの襟を整えながら、俺はまた周囲を見渡す。同期親友に間見えることだけを願いながら、銃を構えた。







9階層。俺は何とか、ここに来るまでの間に出会った面々を倒しきることが出来た。皆が皆、特筆して強いというわけではない。全員何かしらの弱点や隙があり、とはいえここまで来れたのはそれを上手く利用させてもらったおかげだ。 一部は階層を制覇した人間なのに、この程度の力量か──と疑問に思うほどには。

そんな疑問を頭の片隅に置きながら、俺は忍び足(スニーキング)で金属製の階段を上り、10階層への移動を試みる。
その入口付近まで来た時、マニアゴナイフを内ポケットから取り出した。武器というのもあるが──刀身を鏡にして周囲の状況を確認することが出来るこの武器は、非常に使い勝手が良い。

片手にはベレッタ。片手にはナイフ。ガン・エッジと呼称されるこの構えは、非常に攻撃的なことで知られている。
武偵中で培った知識を反芻しつつ、俺は背を壁に預けて刀身を鏡にし、息を潜めながらそっと先の様子を窺った。止めようにも止めることの出来ない拍動の音が、どうにも煩わしい。

そうして、瞳は他者の存在を視認した。刀身の澄んだ光の中にしっかりと視認出来た後ろ姿は、まさに巨漢と形容すべきか。最初の彼氏とは似もつかない、正真正銘の巨漢(おおおとこ)だ。
傍らには、男子生徒が苦悶の声を漏らしつつ横たわっている。その男子生徒も彼ほどではないが、かなり体格が良いはずなのだが──これは少しばかり、手強いかもしれないね。

咽喉の奥から声にも鳴らない声が、洩れた。息を呑んだ音なのか、僅かに物怖じしたその心情が、現れたのか。そんなことを自覚している間には、既に拍動は120ほどを打っていた。
逡巡しているその一刹那に巨漢は何か感じるものを感じ得たのか、身体をこちらに向け──足音を殺して歩いてくる。

咄嗟にナイフを引っ込めたが、これはもう9割ほどの確率で見られたと思っていいだろう。周囲は廃ビルの雰囲気を醸成させているほどの建築様相──日光の射し込む隙は、幾らでもある。
現に俺が立っている階段付近も、天窓として窓硝子がはめ込まれていた。それがナイフに反射しないはずが、ないのだ。

足音こそ聞こえないものの、その気配は一呼吸ごとに倍加されていく。全身から横溢する気を隠そうともしていない。
さながら獰猛な肉食獣のようで、扱いを間違えれば、それこそ一瞬で終わる。そんな相手だと思っておかなかれば、負ける。


「──いるんだろ。コソコソ隠れ
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