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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
序章
二重奏の前奏曲 T
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ャケットを整えながらそこに向かう。
M500(象殺し)と名高い世界最強のリボルバーをレッグホルスターに帯銃している彼女こそが、今回の教官らしい。果たしてそんな銃を、何処で撃つ機会があるのだろうか。
俺たちとは遅れて移動してきた面々も集まり、人数確認を終えたところで──彼女の口から再度、説明が行われた。


「説明をする前に、ウチの自己紹介をしとくわ。蘭豹っちゅうモンや。ここ、東京武偵校の強襲科の顧問をやっとる。場合によっちゃ、この中で面識を持つヤツもおるんやろな。……まぁ、そんなことはええ。再度、ルール確認を行う」


蘭豹の口から告げられた説明は、事前に聞いていた通りだ。それを不備がないか、頭の中で反芻していく。試験形態は、バトルロワイヤル。目で捕捉した全員を倒せば良い。
徒手格闘(CQC)及び銃剣類を主とする。実弾は使用不可能。背中が地面につくか投了の何れかで敗北。
この後は各々割り振られた階層に移動し、試験開始のブザーを合図として動け──とのことである。

というわけだから、下手すればこれがキンジとの最後の会話になるだろう。そんな憂いを胸の何処かに抱きながら、問いかけた。


「キンジは何階層に配置されたの?」
「あー……20階だ。最上階だな」
「ってことは……会う可能性は低いね。俺は5階だから。でもまぁ、頑張ってよ。キンジとはこういう場で闘ってみたい」
「……まぁ、出来る限りはやるさ」


親友と鉢合わせすることを願いながら──そんな意図を剥き出しに剥き出して、何が何でもという意志は見せつけられたろう。
最後は「またね」とも何とも言わないまま、手を振り、或いは振り返しただけで2人はその場を離れた。お互いに武器を確認しながら、目的の階層へと向かっていくのだろう。

取り敢えず俺は、備え付けのホルスターに緩みがないか、銃や刀は装着されているか、試験前の簡易確認だけを済ましておく。
ベレッタM93Rのセーフティは外してある。マニアゴナイフも内ポケットに仕舞っている。背に隠匿してある日本刀にも、手抜かりは無い──銘は『大刀契(だいとうけい)《緋想》』。


「……うん、大丈夫だね」


おまじないのように呟いた言葉は、不思議な作用のようで、高鳴っていた胸の鼓動を幾分か治めてくれた。この流れを逃しては負ける。そう思ったからには、勝ち続けなければならない。
自分の納得する結果で終わらせられることを、願っていた。


『それでは、CQC形態バトルロワイヤル──始めッ!!』


蘭豹の声が、ノイズ混じりの放送で一帯に響き渡った。


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