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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
序章
二重奏の前奏曲 T
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験会場へと向けて歩を進める。件の場所はこの建物と繋がっており、俺も含めて移動にそれほど時間は要さない。実技試験の説明を改めてその場でするようだ。その後は、個々人が指定されていた階層に配置するとのことである。


──俺は確か、5階だったかな……。


などと思い出していると、足音がしなかったにも関わらず、背中に軽く衝撃が走る。何事かと振り返ってみれば、その主は神奈川武偵中学校(カナチュー)の同期親友、遠山キンジだった。
若々しく前髪を翻しながら、その合間に、強襲に成功したような──そんな一種の満足めいた笑みを浮かべている。


「……もう、驚かせないでよ」
「何でだよ。いいだろ、これくらい」
「いいけどさぁ……」


そう告げたキンジは、年相応の悪戯っ子のようだった。というよりも、どちらかと言えば、気心知れた親友と見る方が自然だ。
仕方なしに背中の感触を拭い払いながら、「立ち話していると遅れるから、歩きながら話そうか」と付け加えて先を促す。
窓枠の隙間から硝子越しに射し込む陽線が、少し眩しかった。揃って歩き出すところに、ふと浮かんだ疑問をぶつけてみる。


「それで、キンジ。どうだったの? 筆記試験は」
「いや、それなりに難しかった……気がするぞ。ある程度は頑張ったけど、一部にやられて全部は解けなかったな。彩斗は?」
「うーん、予想より簡単だった。時間が残ったから2回くらい見直しはしたけども、色んな意味でちょっと心配かな」


自分としては安易な問題構成であり、反面、キンジからすれば手を焼かれるものでもあった。勿論、好成績の方が良いというのは世間的な考えだが、果たして武偵校ではどうなのだろうか。
とりわけ強襲科の受験ともなると、その真意のほどが気になってくる。何となく、実技を重要視されている気がしたから。
とはいえ武偵校もそこまで適当ではないだろう……と思いたい。


「……まぁ、たぶん実戦試験がメインだからな。武偵校の、特に強襲科の入試は。多少頭脳面に難があっても大丈夫だろ」
「俺も同じこと思ってた。だからキンジは実戦で頑張って。応援してるよ。もう引き返せない。何せ、ここまで来たんだからね」


言い、試験会場へと続く鉄製の扉を開く。外見もさることながら、その外見を裏切ることなく、確実に重厚感を孕んでいた。
そうして視界に飛び込んできたのは、弾痕も艶かしい建設途中とも思しき廃ビル。外見は普通の建物なのに、中がこの惨状とは──何かしらの意図があるんだろうね。類推するに、屋内戦を想定して造られたとか。 よくありそうなシチュエーションだ。


「へぇ……よく出来てるね。雰囲気がある」


感心しながら周囲を見渡していると、奥にもう1人の教官の姿が見えた。防弾制服のジ
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