第百三十七話
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第百三十七話 愛の詩集
雪路は熱い風呂に入った、その前に身体を洗ってから入ったが。
それだけで二日酔いが急激に解消されていくのを感じた。そうして冷たいシャワーと交互に三度程湯舟に入るとだった。
すっかり元通りになっていた、それで服を着て部屋に戻るとだった。
カーミラは本を読んでいた、雪路はその彼女に問うた。
「何を読まれてるんですか?」
「バイロンよ」
カーミラは雪路に微笑んで答えた。
「彼の詩集よ」
「あの人のですか」
「そうよ、昔から好きでね」
「確かバイロンは」
雪路は彼女の教養の範疇から述べた。
「随分と」
「ええ、スキャンダルもあったわ」
「そうした人でしたね」
「同性愛者でね」
「そうでしたね」
「当時は問題だったから」
「オスカー=ワイルドもそうでしたね」
「欧州というかキリスト教は不思議な宗教よ」
カーミラはこの言葉は幾分かシニカルに答えた。
「同性愛には恐ろしいまでに不寛容よ」
「かつてはそうでしたね」
「今になって変わった、いえ」
「いえとは」
「欧州の人達は取り戻したのかしらね」
こうも言うのだった。
「昔の姿を」
「昔のですか」
「そうよ、キリスト教は同性愛を忌み嫌っているけれど」
それこそ罪に問われるまでにだ、バイロンもそこが問題視されたがオスカー=ワイルドもそうであった。
「古代ギリシアは違ったから」
「そういえばあの頃は」
「男同士は特によかったわね」
「神話でもありますね」
「そうでしょ、女同士でもね」
カーミラは妖しく微笑んでだ、雪路に話した。
「よかったのよ」
「確かサッフォーですね」
「そうよ。それでね」
「欧州はギリシアの頃に戻った」
「心の原風景にね。けれどね」
「戻るまでにですか」
「悲劇もあったのよ。いえ」
ここでだ、カーミラは今度はシニカルな笑みになって言うのだった。
「喜劇かしら」
「悲劇ではなく」
「ええ、多くの人が死んでもね」
その同性愛に対する考えと行いはとだ、カーミラは雪路に自分の中に秘かにあるものを隠して話すのだった。
第百三十七話 完
2019・3・4
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