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ある晴れた日に
30部分:噂はそよ風の様にその七

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噂はそよ風の様にその七

「そんな奴があちこちうろうろしてるなんて、物騒なんてものじゃないわよ」
「そういえば」
 今度は咲が言う。
「何か言われてない?女の子が消えてるって噂」
「何、それ」
 桐生が今の咲の言葉に尋ねる。見れば咲の顔は青くなっている。
「そんな話あるの?今」
「噂よ」
 何故か千佳と同じ前置きになっている。
「あくまで噂だけれど」
「うん」
「北朝鮮かしら」
 テロ支援国家の名前が出て来た。
「何かわからないらしいけれど。何か若い女の子を攫う人間がいるらしいのよ」
「この辺りで?」
「そこまでは知らないけれど」
「まさか」
 それをすぐに否定したのは加山だった。
「この辺りではそれはないよ」
「ないの」
「大阪辺りで噂があったけれど」
「大阪ねえ」
 明日夢が大阪と聞いてある話を思い出した。
「そういえばあの辺りでも北朝鮮の拉致あったわね」
「あれっ、そうなのかよ」
 春華は今の明日夢の言葉に目を彼女に向けた。
「あそこでもあったのか」
「下町の方でね」
「そうだったのかよ。物騒だな」
「けれどかなり前よ」
 しかしここでこう言うのだった。
「もう何十年もね」
「じゃああれかしら」
 千佳が考えながら述べてきた。
「そうした話が女の子が攫われたってことになったり動物を殺したってことになってるのかしら」
「ああ、多分そうだな」
 今まで自分の席で楽譜を見ていた正道が立ち上がって皆に言ってきた。
「音橋」
「そういう奴なんて実際にはそうはいないだろ」
 彼はまず竹山に対して尋ねた。
「そうだろ?そんな狂ったのって滅多にいないだろ」
「まあね」
 正道のその言葉に静かに頷く。
「いないよ、確かにね」
「どれ位の割合だ?それで」
 彼が今度尋ねたのは割合についてだった。
「普通の人間の中で。どれ位いるんだよ」
「千人に一人だったかな」
「そんなものか」
 正道はその割合を聞いてまずは安心した顔になった。
「だったら大丈夫だろ。滅多にいはしないさ」
「ていうか普通に捕まるよ、そんな奴」
 野茂が忌々しげに言った。
「犯罪者が捕まらないでどうなるんだよ」
「だよな。よく考えなくてもな」
 野茂もそれに頷く。
「じゃあ大丈夫か?やっぱり」
「何だかんだで本当にいるかどうかさえ怪しいしな」
「そうだよな。じゃあ今は」
「気にしなくていいか」
「まあ一応はね」
 千佳は桐生と明日夢を見てきた。
「二人共、飼育委員の皆とよく話し合ってね」
「一応注意はしろってことね」
「ええ、御願いできる」
「わかったわ」
 明日夢が千佳の申し出に静かに頷いた。

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