純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 20
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えるようになれれば良いのだけど」
その様子を偶々廊下から見ていたプリシラが、やれやれと肩を持ち上げながら入室してきた。
「! ぷりしらさま!」
「プリシラ様! おはようございます!」
「「「おはようございまーす」」」
「おはよう、皆。ミネットはちゃんと椅子に座りなさいね?」
「はい!」
言うが早いか椅子に座り直して背筋を伸ばし、揃えた両膝に両手を乗せて前を向く幼女。口を閉ざしてさえいれば、教育がしっかり行き届いている立派な淑女の姿勢だ。
「…………この野郎」
プリシラの注意には素早く従うミネットに、クァイエットの口元が引き攣る。
「はいはい。クァにゃんも、早く給仕を終わらせて席に着きなさい」
「うるせーよ、クソババア! 言われんでもやってるっつの! てか、そのおかしな呼び方は止めろ!」
「イヤよ。ネコみたいで可愛いじゃない? おいでおいで、クーァにゃん♪」
「ぶっ殺す。いつか絶対にぶっ殺す。」
軽く握った両手を顔の横に持ち上げ、クァイエットへ向けて浅く上下させる笑顔のプリシラ。
分かりやすく戯けた言動は子供達の無邪気な笑いを誘うが、事情を知っている大人達は皆、顔を真っ赤にして威嚇しているクァイエットからそっと涙目を逸らした。この程度ならまだ優しいほうだ。先は長いぞ「生贄」の青年よ……と、深い同情を込めて。
「ま、冗談は此処までとして。皆、揃ってるわね?」
「はーい。みんな、いまーすっ」
「そう。では、頂きましょうか」
一等席に座ったプリシラの問い掛けに子供の一人が手を挙げて答え、プリシラの前に皿を置いたベルヘンス卿が「おや?」と首を捻る。
「彼女は良いのですか?」
「ええ。彼女はいつも一人で食べているそうですから。お手数を掛けてしまって申し訳ないのですが、一人分だけ厨房に残しておいてくださいますか? 片付け等は不要なので」
「承知致しました。では……」
貴族ならではの丁寧な礼を見せた直ぐ後、横から来たワゴンに立ち位置を譲り、押し手の青年ににこりと微笑む。
「溢さないようにお願いしますね? クァにゃんさん」
「アンタまで便乗すんじゃねぇよッ!」
「失礼。響きが可愛かったもので、つい」
「つい、で人をおちょくんな!!」
謝罪の言葉とは裏腹に面白がっている表情と態度が、またしても子供達の笑いのツボを刺激した。ドッと盛り上がる場に、クァイエットの犬歯が唸りを上げる。勿論、怯える者は一人もいない。
「っクソ………… ほらよ!」
ギリギリと奥歯を噛み締めながらも給仕だけは一応遣り遂げて、ワゴンを厨房へ運ぼうとプリシラに背を向けた瞬間。
「ありがとう、クァイエット。お疲れ様」
至って真面目な声色に、労いの言葉を掛け
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