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その後は隠蔽スキルを使ってモンスターとエンカウントすることなく、無事に安地……迷宮区内にいくつか点在している安全地帯にたどり着くことが出来た。その時点で時計は午後二時半を回っていた。
「まあまあなペースか……。ここからの帰りは時間がかからないといいが」
そうぼやきながら、安全地帯の壁に寄りかかってメニューを開く。ストレージを選択して、今朝作った弁当こと、デカサンドイッチを実体化させた。ストレージに入れていようがいまいが、また、紙に包んであろうがバスケットに入れていようが、食料アイテムは勝手に耐久値を損耗してしまう。そのため、大概のプレイヤーは耐久持ちするそのままではあまりおいしいとはいえない店売りされている食料アイテムを腹の中に詰め込むことになる。中にはプレイヤーの料理人が売る少しお高い昼食を取ることもあるそうだが。
そのため、圏外で豪勢な昼食を取るというのは、案外難しいものなのだ。大抵の攻略組プレイヤーは、料理スキルなんて奇特なスキルを取ることはない。スキルの全てを攻略に向けることこそが、攻略に、ひいては生存に繋がるからである。
何故そんな奇特スキルを取得しているか、というと……俺の場合は中層プレイヤー時代の名残だ。当時はまだ攻略組になるという意識はなかったので、多少趣味のビルドを組んでいてもさほどの問題にならなかったのである。しかし、短期間で俺の周囲が変化していき、攻略組になる、いやなった方がいいという状況になったので、猛特訓をして攻略組の端くれになった、というわけだ。
それでも残っているのは、その時点で熟練度が400を超えていたからである。生産系スキルは100に乗っていれば消すのをためらい、200の時点でもう鍛えるのは必然という領域の類のスキルである。何より鍛えるのに時間と金がかかるため、生産系スキルを取ってそれなりに鍛えた人は無暗に消すことを躊躇うものだ。
だから、攻略組になった後も少しずつ鍛え続けて、多様な料理を作れるようにまで鍛え上げたのだ。せっかく取得して鍛え上げたスキルを消すのは勿体ないし、食事はこの世界で最大級といっていい娯楽だ。それをわざわざ消す必要はないと思って、俺は今まで料理スキルを鍛え続けてきた。
結局、これのおかげで色々と日々の楽しみも生まれたし、こういう風にちょっぴり豪華な昼食も作れるようになった。今や料理スキル無しの生活など考えられないレベルだ。こう考えてみると、攻略組になる決意をした時、料理スキルを削除しなくて良かったと心から思う。
「そういや、さっきキリト達は先に進んでったが……ありゃ大丈夫かねぇ」
自作サンドを頬張りながらボソボソ独り言を呟く。一応アイツらは俺よりもはるか昔から最前線で戦い続けていた猛者の中の猛者だ。それが迷宮区に湧く普通の雑魚モンスター
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