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に後れを取るとは思っていない。万が一があるとすれば、ボスモンスターだ。
俺は一応、ボス部屋の扉を開けはしなかったが、アイツらは開けそうな雰囲気はある。二人ともチャレンジ精神が旺盛なのだ。まあ、何か問題が起きたとしても、転移結晶を使えば瞬時に街には帰れる。何が起きようが転移結晶があれば死にはしないだろう。
二つ目のサンドもあっさり平らげてしまった。S級ではないが、牛系モンスターからドロップしたB級の肉は、多様な調味料のおかげで、現実にあったハンバーガーに近い風味を楽しむことが出来る。
「いやぁ……我ながら旨いなぁ……。この味にたどり着くまで、どんだけの苦労をしたことか……」
ここまでに至る数々の試行錯誤を思い出して、ほぅ、と息をついてしまう。試行回数七二三回。このハンバーガーのためのケチャップ味を再現するまでに失敗を繰り返した回数である。妙に酸味が強すぎたり辛味が薄味だったり、全く別物の味に変貌を遂げたこともあった。
結局この味に到達したのは、それだけの回数をこなした時の訳だが。それは、六十二層辺りの頃の話だ。毎日の食事の際にいくつもの素材を用意して、調味料を作っていた。その様子はさながら化学の授業の実験みたいだ、とそれを見ていた同居人に言われた。
そのかいあって、俺はケチャップ味と所謂とんかつソースの生成に成功した。しかし、正直なところ醤油辺りは欲しい。一応この世界にも白米は存在しているからだ。醤油が無ければおかずがいまいち合わないことがある。現状、白米と合わさるのはとんかつ……のような何かだけというあまりにあんまりな食事情である。あとはせいぜいオムライスくらいのものだ。残念ながらそちらはまだ完成はしたことはないが。
サンドを食べ終わるとボトルアイテムに入れておいた水を飲んで、一息つく。メニューを呼び出して、マップタブを開いて、未踏破のエリアを探してみるが、すべてマッピングされていて、これ以上の探索が必要ないことを告げている。明日にでも、ボスモンスター情報のクエストが攻略されて、ボス攻略戦が行われることだろう。
もはやいつも通りと化した、繰り返された日常だ。新しい層にたどり着くと、転移門が下層と連結されて、通称《街開き》が行われる。とはいっても何か祭りを催すわけではなく、ただ新層が解禁されたことによるお祭り騒ぎだ。いつしかそのように呼ばれるようになっただけのこと。それでも賑やかな雰囲気には、なんとなく俺も気分が高まってしまうものなのだが。
この層の終わりも、もうすぐだ。次の層は、七十五層。ようやくここまで来た。そう思える。あと二十五層なのだ。百層ある内の四分の三が、終わりを告げようとしている。そんな風に、ノスタルジックになってしまうのも、仕方ないだろう。クリアが、少しずつ見えてきた。それは
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