少年の狙いは・・・
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「妖精の尻尾初代マスターとして血より濃い絆を信じてきた者として・・・あなたを今すぐこの世から抹消してやりたい」
メイビスのその言葉は本来恐怖を駆り立てるはずのもの・・・それなのに、ゼレフの表情はなぜか明るいものになっている。
「君に殺されるなら悪くない。でも・・・僕は・・・」
微動だにしない彼の横に腰を下ろす少女。
「もつゆっくり眠っていいのですよ」
「それが・・・できたら・・・」
「私があの時・・・もっとあなたを信じていたならば・・・」
「何の・・・ことだい・・・」
メイビスの言葉の意味が理解できないゼレフ。それは彼らに起きた、かつての悲劇のことだった。
「あなたは私を愛してくれた。その証拠に矛盾の呪いによって私の命は奪われた」
共に不老不死であることがわかったゼレフとメイビス。お互いに惹かれ合ってしまった。同じ境遇・・・二人でしか理解できない域だったから。
「だけど、同じ呪いにかかっているはずの私の方は・・・あなたの命を奪えなかった」
「・・・」
「私はきっと心のどこかであなたを信じていなかった。愛する力が足りなかったのです」
人の命を大切に思えば思うほど、命を奪ってしまう魔法・・・ゼレフはこれまで出会ったこと中で最もメイビスを愛し、大切な存在だと認識した。その力があまりにも強く・・・メイビスの命を奪ってしまった。
しかし、メイビスはゼレフの命を奪うまでには至らなかった。それに気付いた彼女は、兄弟の戦いに割って入ってしまったのだ。
「気に病むことはないよ・・・僕は誰にも愛されたことはないし・・・君の僕に対する感情は"愛"ではなく"情"だと気付いていた」
「いいえ!!情ではありません!!"矛盾"です!!」
思わず声を張り上げた。彼女の脳内に沸いてくるのは、彼と出会ってから起きた多くの記憶。
「あなたと出会えたから魔法が使えた。あなたに出会えたからこの街を救えた。あなたがいたから・・・妖精の尻尾が誕生した」
彼との出会いにより多くの仲間たち・・・愛すべき家族と出会うことができた。彼はメイビスにとって、全ての始まりとも言える人物。
「あなたは私の憧れでした。だけど・・・あなたは死を運び、私に運命を叩きつけた。私の仲間を傷つけ、私を利用し妖精の尻尾を破壊しようとした。
こんなに憎いのに・・・愛しい・・・あなたの孤独に私だけが共感できるから・・・私しか理解できないから・・・思考が矛盾するのです・・・計算できない・・・」
始まりの人物であり、最も憎むべき相手・・・どちらの感情も持ってしまっている相手に芽生えている不思議な感情。それは頭脳明晰な彼女ですら、狂わせるものだった。
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