File2−精霊のカード
ターン9 破滅導く魔性の微笑み
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を欠き、このターン格好の攻撃チャンスを逃したという事実に変わりはない。
「……なら、カードを3枚伏せる。アタシもこれでターンエンドだ」
「俺のターン。カズーラの蟲惑魔を召喚」
カズーラの蟲惑魔 攻800
地面にぽっかりと穴が開き、その内部が水のような液体で満たされていく。よく見るとその穴に見えたものはあきれるほどに巨大な植物によって作り出された縦長の空洞であり、いつの間にかその縁にはポツンと腰かけて涼む少女が1人現れていた。ふわりと腰まで伸びた豊かな金髪はキラキラと輝き、肩を丸出しにした大胆な服装は女性である糸巻から見ても人目を惹くであろうことは容易に想像できる。
だがそれはすべて疑似餌、仮初の姿でしかない。少女がその小さな両足を突っ込んで気持ちよさげに揺らす液体は断じて水などではなく、目を凝らせばその奥底にはほんのわずかにだが前回の犠牲者である哀れな獲物の白骨がまだ消化されきらずに残っている。金髪にしてもその輝きは人間の頭髪というよりもむしろ丁寧に編み込まれた植物の繊維のそれに近く、無邪気そうな瞳の奥底には冷たい理性の色が垣間見えるはずだ。
「【蟲惑魔】か。アンタの商売にゃピッタリだな、ええ?」
「最高の皮肉だろう?カズーラの蟲惑魔1体を、真下のリンクマーカーにセット。誘われ誘われ欲望渦巻く森の奥、食肉の宴は開かれる。リンク召喚、リンク1。セラの蟲惑魔」
セラの蟲惑魔 攻800
新たに召喚された蟲惑魔は、素材となったカズーラと比べてもその攻撃力は同じ。カズーラの作り出した植物の穴が消え、先ほどまでぽっかりと開いていた地面からはその代わりに無数の細かい、まるで絨毯のような毛が草原のように周りへと広がった。そのすべてが先端に水滴のような雫をつけており、さながらタンポポの綿毛のように風になびいてそよそよと揺れるさまはいかにも手を伸ばしてその水滴を触ってみたい衝動を刺激する。いったい、どこに危険があるだろうか?現にこの草原の中央では、小さな少女が楽しそうに手を伸ばしては水滴ごと摘み取っているではないか。
そんな思考が頭をかすめていたことに気づき、彼女はすぐさま頭を振って妄言を打ち消した。無論、あれもまた罠でしかない。水滴はすべて極めて高い粘性を誇り、わずかでも触れたが最後彼女を離しはしないだろう。パニックになって暴れるほどに余計な水滴に触れてしまい、ようやく気が付いたころには指1本まともに動かせない高カロリーな栄養の塊が出来上がるばかりとなる。これがただのデュエルであれば、それもまたお笑いで済んだだろう。だがこのソリッドビジョンはすでにソリッドビジョンにあらず、実体と質量を持つ「BV」だ。実際に人を食うまでは至らずとも、逃れられない粘性までは間違いなく備えているはずだ。
「ではここで通常トラップ、強欲な
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