暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
File2−精霊のカード
ターン9 破滅導く魔性の微笑み
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は現場近くで過去にしょっ引いたチンピラの情報から今回の件のバックにいる者のあぶり出しにかかり、鳥居は土地の権利移転の流れや現在の登記者の洗い出しに着手する。
 性に合わない書類仕事と格闘しながら、糸巻はふと昔のことを思い出していた。あれは、彼女がまだデュエルポリスになって日が浅かったころ。今回の件と同じような流れから経営元を追い詰めた彼女は、やぶれかぶれになって最後の抵抗に打って出たそのトップと「BV」付きのデュエルをすることになったものだ。おそらく、今回も最後はそうなるだろう。それが彼女自身なのか、それとも隣にいる鳥居がその役を担うか程度の違いだけだ。あの時のデュエルで、彼女は後攻だった。その閃きをきっかけに、もう長いこと思い出すこともなかった記憶が彼女の脳内に蘇る。確かあの時も、こんな夕暮れ時だった。





「糸巻、お前がデュエルポリスに魂売ったという話は俺も聞いていた。だが、それで俺を逮捕とはな。この裏切りは高くつくぞ」
「おうおう、風営法違反のご立派な犯罪者殿は言うことが違うねえ。ごたごたうだうだ抜かしてないで、男ならさっさとかかって来いってんだ」
「なるほど、それもそうだ。では、その言葉に甘えるとしよう」

「「デュエル!」」

 誰も見る者のいない、誰が楽しむわけでもない。ただ戦いの道具となったデュエルモンスターズに抵抗を感じなくなったのはおそらくこのあたりからだったのだろう、そう今の彼女は自己分析している。それはひどく寂しい考えだったし、ひどくつまらない考えでもあった。

「俺が先攻だ。少し手が悪いな、カードを3枚伏せてカードカー・Dを召喚」

 カードカー・D 攻800

「こいつを召喚するターンに俺は特殊召喚ができないが、それを補って余りある効果がある。召喚されたこのカードをリリースすることでカードを2枚ドロー、直後にエンドフェイズとなる。ターンエンドだ」
「アタシのターン。まあこんなもんか、馬頭鬼を召喚だ」

 馬頭鬼 攻1700

 男……無論彼にもれっきとした名前はあるのだが、どうしてもそこだけは思い出すことができなかった。ともあれそのがら空きになった場に一撃を叩きこむべく彼女が召喚したのが、馬頭鬼。
 しかし、その地獄の番人が手にした斧を叩きつける機会は、ついに巡ってはこなかった。

「トラップ発動、奈落の落とし穴。攻撃力1500以上のモンスターは破壊したうえで、さらに除外させてもらう」
「ちっ……」

 馬の頭を持つ地獄の番人の蹄を、地中から延びた手が掴む。地獄よりもなお深い奈落の底へとその魂が引き込まれ、消滅する様を彼女は見ていることしかできなかった。彼女のデッキは当時から除外と縁が深く、そこからの帰還手段も通常のデッキに比べはるかに多い。だがそれらはいずれも即効性
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