File2−精霊のカード
ターン9 破滅導く魔性の微笑み
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「はあ?幽霊が出るだあ?」
あの目まぐるしい一夜から、一か月ほど過ぎたある日の朝。最初に糸巻の元へその話を持ってきたのは、彼女の小さな協力者だった。
「はい、お姉様!私はまだ見たことがないのですが、最近学校では噂になっているんですよ。女の子の幽霊が出るって」
そう尊敬に満ちたキラキラした瞳で元気いっぱいに、もし尻尾があればぶんぶんとちぎれんばかりに振り回しているだろうことは想像に難くない様子で話すのは、八卦九々乃……元プロデュエリストの中でも屈指の実力者である七宝寺の姪であり、彼のデュエルセンスを最も受け継いだ少女である。
以前相手してやってからというもの彼女の何がそんなに気に入ったのか、あれからほぼ毎日学校帰りに煙草の匂いが染みついた彼女たちの事務所に通い詰めては嫌な顔ひとつせず彼女が溜まりに溜まった書類と大格闘する様をじっと観察しており、3日目にして音を上げた糸巻が見られてばかりだと調子が狂うということでお茶くみや資料整理をやらせはじめ、本人の飲み込みの早さもあって今では軽い雑用程度ならてきぱきとよく手伝ってくれる事実上のスタッフとなっていた。
そしてその仕事ぶり自体には彼女も文句はない。だが、そんな糸巻を唯一閉口させているのがこの、お姉様なる自分に対する呼称である。他のことならば糸巻の言葉は何でも素直に言うことを聞く彼女だが、この一点に関してのみは頑として譲ろうとしない。その頑固さにはさすがの彼女も歯が立たず、若干自分が折れかかっていることを自覚しながらも、もはや何の重みもないいつもの言葉を返す。
「そのお姉様ってのはやめてくれって言ってるだろ、八卦ちゃん。なんかこう、背中がぞわぞわするんだ」
「駄目……ですか……?」
かすかにうつむき、やや目元を潤ませる少女。その後ろで明らかに面白がっている表情で「事案ですか?」と言いたげな視線を向けて事の成り行きを見ていた鳥居をきっと睨みつけると、その効果はてきめんでこれ見よがしに身震いして助け舟を出した。よりによって八卦の方へ。
「気にすることはないよ、八卦ちゃん。この人も単に照れてるだけなんだから、何ならもっともっと言ってあげれば」
「テメエ!」
「そうだったんですか、お姉様!」
またしても喜色満面でがばっと身を乗り出す少女に対しあまり強気に出ることもできず狼狽する糸巻と、それを後ろから眺めつつ声を出さないように腹を抱えて笑う鳥居。彼の目には、糸巻が会話のペースを握られるこの光景がよほど物珍しいものに映ったようだ。
「そ……それで、だ。話を戻すと、幽霊ってのはなんなんだい?」
強引な話題逸らし。しかしどこまでも純真な少女はその誘導にころっと引っ掛かり、彼女の差し出した餌にすぐさま食いつく。
「はい!実は私、もう調べてきたんです!
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