暗剣忍ばす弑逆の儀 (中)
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いて立っている。その面相や瞳にある理知の輝きからして狂戦士の線は消えた。ランサーかライダー、アーチャーだろう。
彼は裏切りの代名詞だが、メイヴに召喚されているのだ。ランスロットの変貌ぶりを考慮するに、彼がメイヴを裏切る事はないと考えていた方がいい。
日本の僧兵もいる。筋骨隆々にして、呂布にも劣らぬ巨躯である。多数の刀や槍を紐で括り、それを背に負っていた。
これもまた分かり易い特徴だ。浅黒い肌で僧兵、巨躯、そして大薙刀。念のため解析すると、真名は案の定『武蔵坊弁慶』その人であった。
六歳ほどの頃に疱瘡にかかり肌が黒くなった……または母がつわりで鉄を食べた為に、その肌が黒くなったという逸話が弁慶にはある。肌が浅黒いのはその為だと思われる。
そして槍を持つ中華服の老武人。槍を解析すると、真名が判明する。
李書文だ。おいおい年代の違う同一人物がいるのかと呆れてしまう。自分との戦いなどろくなものではないが……この事を知ればマザーベースの李書文は何を思うだろうか。
勝手な印象だが、嬉々として戦いに出向くかもしれない。特異点Fで英霊エミヤと対峙した時の事を思い出すので、出来ればその現場には居合わせたくないものだ。
最後の一騎……これは分からなかった。剣や槍などで武装していないからだ。神性を感じる辺り、さぞかし名のある英霊なのだろうが、彼には武人然とした雰囲気がない。
軽薄な青年といった印象である。裕福な家に生まれた……そう、例えるなら成長した慎二のような印象を受けた。いや成長というより神代補正と血筋補正が入り幸運化して進化した慎二か。ろくでもない奴だ、念入りに髪を刈らねばならない気がする。
「……この場で事を起こすのは得策ではないか」
沈思黙考するも、結論はそれだった。
実力が高位に位置する英霊ばかりがいる区画に、いきなり連れて来られたのは不運という他ない。
アレクセイが言うにはギャラハッドも見張りにいたというから、彼が見張りとして常駐しているのだとしたら最低でも二区画はある事になる。だとすれば少なく見積もっても捕虜は約二千人ほど……。
さてどうする。このままのんびりしておけるほど呑気な性格はしていない。状況も切迫している。メイヴは捕虜の人間を、英霊召喚のための『供物』『資源』『養分』としている。呼び方はなんでもいいが、生け贄として引っ立てられた先にはメイヴがいると判断していい。何せ召喚主はメイヴなのだから。
選択肢は二つ。
一つはこのまま捕虜が連れて行かれるのを黙って見ておき、その間に隙が出来るのを虎視眈々と待ち続ける事。
これのメリットは比較的安全に作戦を実行に移せる点だ。しかしそれは、助けられる見込みが正直全くないからと、此処にいる全ての人々を見捨て、自身らの為に捨て石にす
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