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ある晴れた日に
294部分:空と海その二十七
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空と海その二十七

「下手こそもののってよ」
「おい、待て」
 これまた速攻で言い返す正道だった。
「俺が下手だっていうのかよ」
「野村義男さんとか布袋さんに比べたらどうよ」
「そんな人達と比べたらよ」
 流石に分の悪い正道だった。
「俺だってよ」
「あと武内亨さんもよかない?」
「チェッカーズね」
 春華は咲と笑顔で言い合う。
「咲九州の人だからあの人達好きなのよね」
「また結構レトロだな」
 この歳でチェッカーズを知っているというのもかなりのものであった。
「チェッカーズなんてよ」
「だよなあ」
「とにかくだよ。俺は流石にそうした人達の域には辿り着いてないさ」
 これは謙遜ではなく実際にわかってのことだった。自分の技量ははっきりと把握しているつもりであり自信はあっても慢心はしていないのだった。
「それはな。しかしな」
「しかし?」
「下手の横好きじゃねえからな」
「じゃあもっと練習しな」
 いささか素直でない春華のエールだった。
「本当に義男さんの域までな」
「ああ。けれど御前の村さんのギター好きなんだな」
「いいだろ。あゆのコンサートでもライダーの曲でもな」
 野村義男はかつてアイドルであったがそれを覚えている人間は少ない。そのことを知っている人間もまた少ないのである。今ではギタリストである。
「あの人のギター聴けるのがいいんだよ」
「っていうかこいつ野村さんのファンなのかよ」
「意外だな」
「だよなあ」
「布袋さんはわかるけれどな」
 野茂、坂上、坪本、佐々がそれぞれ言う。
「まあヤクルトだからか?」
「ノムさんかよ」
「ってそれ何時の時代だよ」
「俺等が生まれた頃とかガキの頃の話じゃねえか」
「ああ、その縁なんだよな」
 今度はヤクルトファンとして答える春華だった。答えながらそのまま上を見上げ太陽を見る。太陽は相変わらず激しい光をこれでもかと放っている。
「野村監督と名字が一緒だったからな」
「やっぱりそれかよ」
「ヤクルトかよ」
「ヤクルトは身体にいいんだよ」
 はっきり言って野村とは関係のない言葉だったが春華の中では一致しているらしい。
「一日一本飲んでよ」
「で、それで野村尽くしか」
「濃いな」
「あと好きな名前はやっぱりあれだよ」
 野村だけではないらしい。
「若松とか古田とか池山とかな。あとうちの名前もいいだろ」
「伊藤?」
「あの高速スライダーのか?」
 話を聞いてすぐにわかった一同だった。
「化け物じみたあれかよ」
「確かに名字同じだけれどよ」
「だから好きなんだよ。自分の名字」
 にこにこと誇らしげに笑ってさえいる。
「もうよ。スワローズの為にあるって感じでよ」
「それ言ったら私は横浜になるんだけれど」
 こ
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