暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝供書
第四十話 上田領有その三

[8]前話 [2]次話
「特にその政を見てな」
「思われますか」
「そして優れた者なら出の低い者も重く用いられる」
「高坂殿も」
「あの御仁は元は百姓であるな」
「そうでしたが」
 その彼もというのだ。
「今ではです」
「名家高坂家を継がれてな」
「重く用いられております」
「大層整った顔立ちの方だというが」
「はい、そのお顔たるや」
 高坂の顔立ちについてもだ、幸村は答えた。
「擦れ違うと誰もが思わず振り返る」
「そこまでの方じゃな」
「甲斐一の美童と言われ」
「元服されてもか」
「そのお顔立ちは見事なものです」
 即ち非常に整っているというのだ。
「実に」
「そうであるな、そしてお主の様な甲斐以外から出た者もな」
「重く用いられています」
「では」
「はい、当家もです」
 真田家もとだ、幸村は答えた。
「無論」
「優れているとか」
「お館様は思われれば」
 それでというのだ。
「重く用いられます」
「そうなるな」
「そしてです」
 幸村はさらに話した。
「その所領もです」
「上田もか」
「真田家のものとしてです」
「認めて下さるか」
「左様です」
「そのこともな」
 信之にしてみてもというのだ。
「わしもじゃ」
「既にですか」
「そうであろうと思っておったが」
「では」
「さっきも言ったがな」
 まさにというのだ。
「武田家に入ってじゃ」
「そのうえで」
「生きることがな」
「真田の取るべき道ですな」
「そう思う、しかしな」
 それでもとだ、信之はここで難しい顔になりそのうえで弟に述べた。
「わしがそう思っていてもな」
「父上、叔父上に」
「何といってもじゃ」
「主であられる祖父殿ですな」
「そうした、どう言われるか」
 その彼等がというのだ。
「特に祖父殿がな」
「それがしが間違っていると思われれば」
「お主の言葉に頷かぬ」
 そうなってしまうというのだ。
「お主にとっては残念なことであるがな」
「そうなりますな」
「うむ、その時お主はどうする」
「何度でもです」
 一度で首を縦に振ってもらわずともだ、幸村は兄に強い声で答えた。
「お話して」
「そうしてか」
「頷いてもらいます」
「そうか、そう考えておるか」
「それがしは確信しています」
 まさにというのだ。
「お館様の下に加われば」
「当家は安泰でか」
「そしてです」
「栄えるな」
「そして天下もです」
 ひいてはというのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ