死力を尽くし、犬死せず
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導するのは、『人類愛』として当然の義務だ。しかし――あの大軍をどうにかするには、それでは足りない。もっと根本的な解決方法を探る必要がある。故にマクドネルが下した決断は……《敵地への単独潜入》である。
不可能ではないと彼は考える。何故なら敵軍団は、どういうわけか人間を生きたまま搬送しているのだ。何か狙いがある、目的がある。起死回生を図るには、BOSSに情報が必要で……その情報を得る事が、兵士の役割である。
「――死力を尽くせ。兵士として最悪に臨み、最善を尽くせ」
BOSSが口を酸っぱくして、繰り返し繰り返し説いてきた心構え。そして、絶対に死ぬなと最後には結んでいた。
マクドネルは思う。そうだ、それが兵士だ。だが、兵士なら――それだけではいけない。
BOSSは根本的なところで甘い。死ねと命じる事が出来ない。いや、出来るが、命じたくないと思っている。
ならば自分がやる。命じられずとも。絶対に死ぬなという訓辞を、犬死にするなと自分の中で改めて戒める。最悪に臨み、そして最善を成そう。マクドネルは全ての武装を捨てた。そして紅い布とダイヤモンドだけを持って、敵兵にわざと捕まりに行った。相棒は逃がそうと思ったが、バディは笑ってマクドネルと道を同じくしてくれた。
「BOSSは二人で一人だと言っただろ? マクドネルが行くならおれも行く。一人より二人、その方が任務の達成率は上がるはずだ」
「……すまない、とは言わないぞ」
捕虜となったマクドネル達は、まるで家畜のように運ばれた。
忌々しいケルト軍の戦士達。不気味なほど同じ顔の並ぶ軍団。過酷極まる訓練を越えた自分達すら、個体同士の戦いでは手も足も出ないだろう。
それだけの力量差がある。そんな化け物をBOSSは平然と手に持った武器だけで仕留めるのだから、彼はやはり戦士としてもかなりのものなのだろう。
まあ、尤も。瞬間移動さながらの速さを持つ『人類愛』のアイドル、オキタや。戦場の砲兵のシータ。ビッグ・ママ。アルジュナには遠く及ばないらしいが。それは比較する方が間違っている。
運搬速度は嫌になるほど早かった。
急いでいるのか、捕虜とした人間をケルト軍は抱えて走り、それこそ一度も止まらず、一週間走り通していた。無論、人間達は衰弱している。死の一歩手前にまで。当たり前だ、最低限の食事、水分補給を、ケルト軍が走りながら無理矢理口に捩じ込み、排泄などもそのまま垂れ流しにさせていたのだから。これで体調を崩さない方がどうかしている。
それはマクドネル達も例外ではない。なんとか動けはするが、それでもまともに行軍する事すら叶わないほど苦しい心身を抱えてしまう。
だが彼らは不屈だった。その眼から任務への使命感は消えていない。消えるわけがない。
彼ら
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