実働開始だよ士郎くん(下)
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、その相手は決まってる――と思いたい。いや真面目な話、一筋縄ではいかない話の気がするので考えたくないというのが本音だが。
「ところでネロ。お前の言う浮気とはなんだ?」
ネロに玉藻の前に似た空気を感じていたので若干声が震えたが、なんとか平静を取り繕って問いかけた。
するとネロは不愉快な事を聞いたとばかりに回転するのをやめ、俺の正面に向き直る。
「無粋な事を聞くな……そんなもの、心が決める。具体的に言えば伴侶のおる身で、本気で他の者に惚れたら浮気に決まっておろう! というより肉体的接触もイロイロとアウトである!」
「……浮気者にはどうする?」
「愚問である! 浮気者にはこの世の地獄を味あわせるのみだ!」
「この世の地獄とはなんぞや」
「えっ。え、えー……っとぉ。……地獄とはなんぞや。そういえば余、キリスト教とか弾圧した側だから地獄なんて知らなかったりして。てへっ」
反駁するとネロは途端に口ごもった。誤魔化すように濁すも、やはりネロはその手の知識に疎い。地獄という名称自体、ネロには合わないだろう。
尤も言わんとするニュアンスは伝わった。ネロの中で浮気者=物理的断罪の方程式が固まる前に、それとなく保険を刷り込んでおこう。
「浮気者は断罪する方針なのは分かった。だがいいのか?」
「む?」
「浮気されたから断罪する……それでは伴侶の浮気相手にお前は敗けを認めたと宣言するようなものだぞ」
「なんと!? 何故そうなるのだ!?」
「だってそうだろう。他の女に心を盗られたら、取り戻す自信がないから断罪する。そう言っているようにも受け取れる。真に愛するなら心を取り戻すぐらいの気概がなくてはな」
「む、むむむ……い、一理ある……? か? ……むぅ、何故か丸め込まれている気がするぞ……」
「それこそ気のせいだって」
ははは、と笑う。俺はネロとそういう関係じゃないからセーフ。彼女はサーヴァント、いずれ彼女は彼女の運命と出会うだろう。出会えたらいいなと祈っておこう。その時正式なマスターとなった者のために、こうして保険を刷り込んでおく……まさに俺は今そのマスターの身を救ったのだ。
ふ、またしても顔も知らぬ誰かを救ってしまった。俺も中々やるものだろう。口先の魔術師とは誰が言ったのだったか。詭弁を弄させれば彼のカエサルにだって敗けはしない。いや負けるかな。負けるという事にしておこう。俺はあんな歴史的詐術使いではない。脳裡に浮かんだあかいあくまの物言いたげな顔を掻き消す。
ネロは暫く腕を組んで首を傾げていたが、ふと思い出したように俺に言った。
「ところでマスターよ。そなた、仕事があるのではないか?」
「……それを言ったらお前もだろう。練兵とか兵舎・住居・病院建造計画とか、陳情の決裁はどうした」
「余は余に
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