アウトロー・オブ・アウトロー
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王は知っていた。その小さな村のために彼は生前、一国に歯向かった英雄なのだと。
故に、ビリーは知っている。悔やみきれないほど悔やんで、それでも決断しなければならなかった事に苦しんでいるのだ。
ロビンはそんな内心を押し隠している。それをほじくり返すほど、ビリーは悪趣味ではない。そっか、と小さく相槌を打つだけだ。ここの村人達は救えない、救われるつもりがないのだから、救えるはずがない。
だからここまで。この一回の防衛を終えたら、彼らはこの村から離れる。ロビンは積もった雪を踏み締めて、あくまで軽口を叩く。
「にしても、かなりの団体さんみたいだぜ。さっきからオレのトラップ、全部引っ掛かってやがる」
「ふぅん。なら今回の成果はどれぐらいかな? 五割は固いね、七割削れるかも?」
「ソイツはいい、少しは楽が出来るってもんさ」
ビリーも立ち上がる。なんでもない散歩に出掛けるような気楽さで、二人は戦場に赴く。
この村の近辺を戦場にするつもりはなかった。残り僅かな彼らの平穏を守るために、罠を越えてくる敵軍を殲滅に向かう。
村人達は死ぬだろう。老いも若いも関係なく、等しく皆殺しにされるだろう。だがそれまではせめて、心安らかに居てほしい。ささやかな祈りを胸に、英霊達は戦うのだ。
そうして戦場にたどり着く。
僅か百と一の敵の悪鬼を滅ぼすために。
「な――」
驚愕は義賊のもの。罠の掛かり具合から、一万は下るまいと思っていた敵軍は、たったの百人だった。
罠で削られた兵力ではない。最初から百騎だけなのだ。何故なら敵兵士は少しも傷ついていない。先頭を単騎駆けしている一騎のサーヴァントが、ロビンのトラップに《自分から》飛び込んで、兵士達が罠に斃れずにいいようにしていたのだ。
落石、落とし穴、その他各種の精妙な罠の数々。自然界の毒であるイチイのそれもふんだんに使用している。例えサーヴァントが相手であってもただでは済まない芸術的な破壊工作だ。それに――全て嵌まりながらなお笑顔を浮かべて進撃してくる傷だらけの巨漢。
小剣を手に、毒を喰らい躰に風穴を空け落石に押し潰され、なおもそれらをはね除けて進んで来る敵サーヴァント。
「はあ!? 幾らなんでもそんなんアリか!?」
罠が躱される、捌かれる。或いは宝具や技能で無効化されたのならまだ分かる。
しかしトラップの全てが通用しているのだ。確実なダメージを負っている。にも関わらず、あの筋肉の塊めいた巨漢は笑みを絶やさずに進んで来る。
傷つく度に傷は塞がり。二度と同じ罠が効いていない。小規模なものはその肉体に弾かれ、或いは反射されているのだ。そして自らが率先して罠に掛かることで、味方の兵士を護っている。
完全に想定外の罠の破り方。罠に掛かる事を前提とした強行突
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