第三十九話 信濃守護その十
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「美濃の政を固めれば」
「近江を攻めて」
「そして遂にじゃ」
「上洛ですか」
「その際わしは両腕に長尾虎千代とじゃ」
それにと言うのだった。
「織田吉法師をじゃ」
「お二方を」
「前にも話したが」
「家臣にされてですな」
「わしと共に働いてもらう」
「織田殿ですが」
馬場が目を光らせて言ってきた。
「お館様に言われる通りにです」
「かなりの者であるが」
「それがしもこれまでうつけ殿と思っていましたが」
「それがじゃ」
「恐ろしい傑物ですな」
「今の尾張のことを聞けばわかるであろう」
「はい」
まさにとだ、馬場は答えた。
「あの国は非常にです」
「治まっておるな」
「民も国も潤い」
そしてというのだ。
「日に日に豊かになり」
「兵もな」
「弱いですが」
尾張は弱兵として知られている、このことは信長といえどもどうしようもないことも伝わっているのだ。
「しかしです」
「その武器はな」
「足軽までがよい具足で」
それを着けてというのだ。
「槍は長く弓矢が多く」
「鉄砲がな」
「随分とです」
「多く買いだしておるな」
「お館様もですか」
「あれはよいものだと思ってな」
晴信もだ、鉄砲はよいものだと見抜いているのだ。だがそれでもなのだ。
「買いはじめておるが」
「それでもですな」
「随分とな」
その鉄砲がというのだ。
「高いのはよいが」
「買える場所が近畿や薩摩で」
「遠くて簡単に買えぬ」
そうした状況だというのだ。
「また鉄砲鍛冶もじゃ」
「国友村等にいますが」
「それでもな」
「やはり甲斐からは遠く」
「それでじゃ」
その為にというのだ。
「どうしてもな」
「我等は多くを揃えられませぬな」
「しかし尾張は違う」
ひいては信長はというのだ。
「甲斐よりはずっと近畿に近くな」
「商いも盛んですので」
「その鉄砲も多く仕入れられる」
「そして実際にですな」
「仕入れておる、尚且つ家の中はまとまっておる」
信長のそれはというのだ。
「見事にな」
「家臣もですな」
「一つにな、奇矯な振る舞いが目立つといえど」
それでもというのだ。
「あの者はじゃ」
「その実は」
「かなりの者じゃ」
「そしてですな」
今度は内藤が言ってきた。
「越後の長尾殿は」
「家督を継いでからじゃ」
「まさに戦をすれば必ず勝つ」
「それも見事にな」
「それを見ますと」
「かなりの者じゃ」
景虎、彼もというのだ。
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