春の座席は甘いので、朝採り&生食がオススメできる話
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擦った。
膝が触れた瞬間の危険なくすぐったさ。ちょうど目をつぶったタイミングだったので不意打ちすぎて、あやうく声が出るところだった。
(あ、あぶねえ)
肝を冷やした隼人。変な声が出たりしようものなら一発アウトだ。二度と彼の前には座ることができないだろう。
またまた内心で胸をなでおろす。
(あ、それよりもだ)
隼人はすぐに頭を切り替えた。
大切なのは目の前の現実である。
この状況、今考えるべきことは――。
(ここまで距離が近くなったことは今までないし、せっかくだから、あいさつ以外にも何か話しかけたい)
彼は目の前に立つ理由を明かしているわけだが、それは「そういうことだから、話しかけるなよ」という意味まではないと思っていた。
むしろ、言いづらそうな理由を正直に話してくれて、その後も前に立ってくれて、あいさつまで返してくれているということを考えれば、ここで話しかけても迷惑とまでは思われないのではないだろうか?
そう考えた隼人は、このチャンスを生かす道へと進むことにした。
が……。
(でも何話せばいいんだ?)
彼とは、通っている学校の偏差値が違いすぎる。偏差値が二十違うと話が合いにくいとかいう怖い話をどこかで聞いたことがあった隼人は、話題の選択に悩んだ。
(困ったなあ……向こうのレベルに合わせるなんて、俺無理だし)
うーん、と悩んで髪を掻いて上を向いてしまった……ら、彼とまともに目が合ってしまった。慌てて下げる。
そして下げた視線の先にあったのは、彼の右手にある、謎の冊子。
(お。会話のきっかけはこれがいいか?)
このチャンスを逃すのはもったいない。隼人は思い切ってもう一度顔をあげ、冊子を指さして、言ってみた。
「それ、何?」
「ああ、これはな――――っ!?」
「えっ!?」
彼は冊子に目をやったのち、突然何かに驚いたように目を見開いた。
その反応に意表を突かれ、隼人も驚いてしまった。
お互いが、イレギュラーな顔で見合ってしまう。
(あれ? そんなに意外な質問だったのか? やべ、どうしよ……)
焦った隼人がごくりと唾を飲み込み、のどが動く。首に薄くにじんだ冷や汗のせいで、学ランのカラー部分が滑らず、皮膚を攣った。
「……これは、今日提出する予定のレポートだ」
あたふたしたままの隼人とは対照的に、一足早くいつもの理知的で沈着冷静な表情に戻っていた彼。眼鏡を一度直し、そう答えた。
(よかった)
彼の声の調子から、どうやら質問内容で怒らせてしまった可能性はないようだ。隼人は安堵した。
「そ、そっか。頭いい学校ってそういうの大変そうだもんな。アハハハ」
ホッとすると、今度はあい
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