7月
第76話『七夕』
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して声に出してそれを読まれてしまう。
「「『平和な日常を送れますように』」」
僅かな沈黙。と、同時に彼女らから向けられる生温かい視線に気づいた。
「な、なんだよその目は!」
「いや〜なんかここまで来ると恥ずいね」
「うるさいな! いいだろ別に!」
莉奈に言われ、晴登は小っ恥ずかしくなって顔を背ける。
すると、見知った名前の付いた短冊が視界に映る。
「これ、結月の・・・」
一瞬、嫌な予感が頭の中を過ぎったが、あれほど言ったからさすがに違うことを書いているだろう。そう思い込んで、晴登は結月の願いを読んだ。
『ハルトの願いが叶いますように』
「……こっちの方が恥ずかしいだろ」
文句を言いながら、晴登の口角は自然と上がっていた。彼女の願いは晴登の願いそのもの。そう思うと照れくさくもなるが、自信も湧いてくる。
「晴登〜何してるの? 置いてくよ〜!」
「今行くよ!」
晴登の願いを見て好奇心は満足したのか、彼女たちはもう帰路につこうとしていた。莉奈の言葉に急かされ、晴登もその元へと向かう。
その時、気持ちの良い清々しい風が彼らを撫でた。
すると、一枚の短冊がそれに巻かれて翻る。
『ハルトとずっと一緒に居られますように』
結局それが書かれてしまっていたことを晴登が知る由もなく、一行はこの場を後にした。
新緑が青々と茂り始め、太陽も燦々と輝いている。熱気で火照る身体は、時折吹く涼しい風が冷やしてくれた。
今年もようやく、その時期が訪れようとしている。
彼らはこの時期に何を見るのか。
──夏が、来る。
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