暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
7月
第76話『七夕』
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「」ツーン


結月が無反応になったので、晴登はそれ以上の言及を諦めた。折れてあげる、と言ってはくれたからには、その通りにはしてくれるだろう。このままつっかかっていては、お互いに願い事を書けないまま、この時間が終わってしまうのだ。いや、終わってくれた方が嬉しいのだけれど…。


「書いとかないといけなそうな雰囲気だしなぁ…。何て書こうかな」


自慢じゃないが、晴登にはこれと言って願いは無い。だからこの時間は苦痛でしかないのだ。
しかし、逆に嘘を書くことはプライドが許さない。お陰で一向にペンは進まなかった。


「アイツらは何書いてんだろ…」


晴登は顔を上げて、席の離れている莉奈や大地、さらに伸太郎や狐太郎も見た。彼らも遠目からは悩んでいるように見える。
やはり、みんなには夢や願いはまだ無いのか。それとも、有るがどう表現するか迷っているのか。もちろん、そんな人の考えを他人が容易に推し量れるはずもない。


「願い、かぁ……」

「困ってるみたいだね」

「うぉっ、先生!?」

「しーっ、静かに」


晴登の呟きに呼応するかのような突然の山本の登場に、思わず声を上げてしまった晴登は慌てて口を塞ぐ。すると山本は微笑みながら、「アドバイスをしよう」と言った。


「夢や願いは決して大きくなくてもいい。何かになりたい、美味しいものを食べたい、好きな人と一緒に居たい・・・そういうの全て、ささやかなことでも"願い"と言えるんだ」

「あ…」


晴登は思わず振り返りそうになりながらも、山本の話を聞き続ける。


「君は本当に願いが無いのかい? ちょっとしたことでもいい。これがしたいと、ふと思ったことをここに書いてみるんだ」


そう言って、山本は晴登の元を離れた。

相変わらず不思議な先生だ。彼の話を聞いていると、どこか別の世界に引き込まれそうな気分になる。
だが、彼の言うことは何となく理解できた。


「俺のしたいこと・・・そうだな」


晴登はシャーペンを手に取った。






HRの時間も終わり、下校を知らせるチャイムが鳴った。生徒は先生に挨拶を交わしながら教室を出ていく。晴登もその一人だ。


「俺らが書いた短冊は校門前の笹に吊るされるんだってな」

「うわぁ…ヤダなぁ…」

「ちなみに晴登は何て書いたんだ?」

「俺の口からは言いたくないよ」


廊下を歩きながら、「はぁ」と晴登はため息をついた。無論、この学校のよくわからない風習のせいである。隣を歩く大地はあまり気にしていない様子だが、違和感くらい持って欲しいところだ。


「あーいたいた! 置いてかないでよハルトー!」

「お、結月・・・と莉奈」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ