7月
第76話『七夕』
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正直に答えたはいいが、二人の反応を見て数秒後に晴登は己の不手際に気づく。今の言い方では誤解しか生まれない。
「あ、いや、違う、今のはそういう意味じゃなくて──」
「…ごめん晴登、私は邪魔者だったみたいね。今度からは別々に学校に行こう」
「いや、ホントに違うんだって!」
莉奈がシリアスそうに受け取るので、晴登は必死に弁明する。
すると彼女は小悪魔っぽい笑みを浮かべて、
「冗談冗談。晴登ったらすぐ信じちゃって〜」
「全く、心臓に悪いな…」
「俺も晴登と一緒に学校行くの止めるわ」
「え、まだこの下り続けるの?!」
時間差でボケてくる大地に一喝したところで、朝のチャイムが鳴る。莉奈と大地は名残惜しそうに晴登の元を離れた。
「朝からハードすぎるだろ…」
晴登はまた静かに頭を抱えた。
*
時が過ぎるのは早いもので、あっという間に6時間目のHRの時間になった。山本が教室に入って来るのと同時に、晴登はあることに気づく。
「えー今日は七夕なので、皆さんには短冊に願い事を書いて貰おうと思います。もう校門で書いた人は自習してて構いません」
「結局書くのかよ…」
フリーイベントなのかと思えば、やはりそうは問屋が卸さない。結局は願い事が人目に晒される運命のようだ。
山本は手に持っていた短冊を皆に配っていく。
「でも、あの願い事だけは書かせないようにしないと。なぁ結月──」クルッ
「ん、なに?」
晴登は結月に一言言っておこうと振り向くと、結月は早くも短冊に何かを書いていた。晴登は書かれた文字を一瞥して、恐る恐る問う。
「・・・ねぇ、俺の名前が書いてあるように見えるのは気のせい?」
「うーん、事実かな」
「否定してくれよ…」
くっきりとボールペンで書かれたそれを見て、晴登は大きく嘆息した。でも名前だけだ、まだ間に合う。
「結月、俺の言いたいことはわかるよな…?」
「バカにしてもらったら困るよ。ハルトの考えてることなんてボクにはお見通しさ。とりあえずこの後は、『ずっと一緒に居られますように』って──」
「何もわかってないじゃん! それだけは書くなよ! 絶対書くなよ!」
「ふふん、ボク知ってるよ。そういうの"ふらぐ"って言うんでしょ?」
「いや回収しなくていいから!」
結月の手を止めるために、晴登は必死に説得する。彼女の願い事をあんな公の場に晒す訳にはいかない。今後の日常を守るには、今ここで止めなければならないのだ。
「む〜ハルトは強情だなぁ。仕方ないからボクが折れてあげるよ」
「え、何、俺が悪いの? 悪くないよね?」
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