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7月
第76話『七夕』
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て──」

「待て待て待て待て! まさか、あの願い事を書く気じゃないだろうな?!」


結月が真っ先に机に駆け出そうとするので、慌てて晴登は手を引いて制止する。もし今朝の願いをそのまま書かれたら、恐らく晴登は学校で気まずい思いをすることになるだろう。何としても止めなくてはならない。というのに、


「え、むしろそれ以外に何書くの?!」

「あっさり認めるのかよ! ダメだ、行くぞ結月!」ガシッ


清々しいくらいに正直な結月の手をしっかりと握り、晴登はそそくさとその場を離れる。結月の容姿のせいもあって、騒ぐとやけに周りの目を引いてしまうが、今はやむを得ない。彼女を放っておく方が心臓に悪いのだ。


「あぁボクの願い事が! あ、でもこのままハルトと手を繋いでいるのも良いかも・・・」


どこまでも懲りない結月に気恥ずかしさを感じながらも、晴登はため息をついた。


「今日は、無事に帰れるかな……」


これが杞憂で済んでほしいと、心底願った。






教室の扉を開けると、いつもの騒がしさが部屋中を席巻していた。晴登は荷物を整理すると、すぐに机に突っ伏して密かにため息をつく。


「おはよう晴登。どうした、朝から元気ねぇな」

「あぁ、おはよう。ちょっとな…」


その晴登の様子を見てか、大地が話しかけてくる。今の有様じゃ言い訳はできないだろうから、晴登は静かに後ろを向いて大地に示す。
そこには登校早々、女子たちに囲まれて挨拶を交わす結月の姿があった。


「結月ちゃんがどうかしたのか?」

「実はさ・・・」


晴登は朝からの出来事をありのままに大地に伝える。ホントは口に出すのも恥ずかしいのだが、誰かに共感して欲しかった。しかし彼はそれを聞いて、うんうんと頷きながら一言、


「別に、喜んでいいんじゃないか? そんなこと言ってくれる子なんて、そうそう居ないぜ?」

「う、そうかもしれないけど…」


そう言われてしまうと反論の余地はない。事実、恥ずかしいけど嬉しくもある。
だがせめて、時と場所を弁えて欲しいものだ。ちっぽけではあるが、体裁に関わるので。


「全く、晴登は変なとこで女々しいんだから」

「いきなり出てきてその言い分はないだろ、莉奈」

「お、莉奈ちゃんおはよう」

「おはよー・・・って、それどころじゃないよ! 何で朝は私を置いて行ったの?!」


突然現れて大声を上げられると、朝は少し堪える。確かに置いて行ってしまった気は薄々していたが、別に毎日一緒に行く約束もしている訳ではないし、何よりその時は・・・


「あー悪い、結月のことで頭が一杯だったから」

「「……え?」」

「……あ」

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