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戦国異伝供書
第三十九話 信濃守護その一

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                第三十九話  信濃守護
 武田家は信濃に順調に兵を進めていっていた、諏訪を領地にし主の頼重を都に追ってからもだった。
 順調に信濃を領地にしていった、その中でだ。
 晴信は佐久にも兵を進めていたが佐久の国人達は集まりそのうえで彼と戦おうとしていた。だがここでだ。 
 山本が幸村にこう言った。
「@これよりお館様の御前にな」
「行かれますか」
「お主も来てくれるか」
「それがしもですか」
「次郎様も来られる」
 信繁もというのだ。
「そのうえでお館様に申し上げたいのじゃ」
「次郎様からのお話ですか」
「そうじゃ、お主もとな」
「山本殿はわかりますが」
 それでもとだ、幸村は首を傾げさせて話した。
「それがしもとは」
「お主の知略も見てじゃ」
「それで、ですか」
「次郎様は言われたのじゃ」
「それがしもお館様の御前にですか」
「供にとな」
「左様でありますか」
「そもそもお主は佐久に詳しいな」
 幸村を見てだ、山本は彼に問うた。
「そうであるな」
「はい、真田は代々上田にいますが」
「上田は佐久の隣であるな」
「それで代々秘かに隅から隅まで歩き」
 そうしてというのだ。
「知っております」
「そうであるな、だからじゃ」
「それがしにもですか」
「お主の知略と共にな」
「佐久を知っているからこそ」
「供にとのことじゃ」
 山本は幸村を見据えたまま述べた。
「そういうことじゃ」
「それでは」
「佐久を手に入れるとな」
 武田家がというのだ。
「あそこは広いからのう」
「はい、信濃を手中に収めることに向けて」
「かなり大きい」
「だからこそですか」
「佐久は出来るだけ無難にじゃ」
 武田家にとってというのだ。
「手中に収めるべきと考えておるからな」
「それがしにもですか」
「そしてじゃ」
 その隻眼を光らせてだ、山本はさらに話した。
「わかるな」
「上田もですか」
「お主の家にもな」
 真田家にもというのだ。
「当家についてもらいたいが」
「左様ですか」
「お主が来たのはお館様の器を見る為であろう」
 山本は幸村にこうも問うた。
「そうであろう」
「おわかりでしたか」
「お主と十勇士だけが仕官しに来るとはな」
「普通はないとですか」
「それはわしもわかるしじゃ」
 それにと言うのだった。
「お館様もじゃ」
「最初からですか」
「そうだと思っておった、してお主から見たお館様はどうした方じゃ」
「天下の方です」
 幸村は山本に即座に答えた。
「まさに」
「そう見るか」
「山本殿もそう思われるかと」
「その通りじゃ」
 山本もすぐに答えた。
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