ケルト的運命の出会いだね士郎くん!
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と思ったのだ。しかし――
「――なんだ。捨ててしまうのか? 勿体ないのう」
「――」
俺と沖田の眼前に、唐突にその姿を現した女のサーヴァントに、瞬時に戦闘体勢を取る。
しかしその槍兵は待てと言うように槍を小さく振った。――俺にとって頼もしさの象徴である朱槍を。
「一先ずは見事な戦振りであったと讃えよう。窮地に陥るようであったら助太刀しようと思っておったが、どうやら要らぬ心配だったようじゃな」
「――」
「儂にお主達と事を構える気はない。ケルトからお主らに鞍替えしようと思ってな。どうじゃ、儂を雇ってみる気はないか?」
「あんたは……」
肌に張り付くような黒い装束。二振りの朱槍。
誇り高く、何者にも傅かない、生まれながらの王者としての風格がある。紅い瞳、赤みを帯びた黒髪、鋭利な美貌――俺は隻眼を見開く。そして、思わず問い掛けていた。
「スカサハ、か……?」
「如何にも。というより知っておるだろう?」
鷹楊に応じた影の国の魔女――スカサハは。
魂の腐敗など欠片も感じさせない、サーヴァントらしい全盛期の魂を持って、自信に満ち溢れた若々しくも不敵なる表情で微笑んだ。
「我が最高の弟子より死を馳走された愚かな師。人理を守護するカルデアの前に愚昧にも立ちはだかった醜悪な魔女。カルデアのクー・フーリンに心臓を穿たれたモノ――スカサハ。いつぞやの迷惑の借りを返すまたとない機会じゃろう? どうじゃ、影の国の門番の力……お主の下で使ってみる気はないか?」
唐突に現れ、突然の申し出に、俺は目を白黒させ。
「――あんた。意外と婆臭い喋り方なんだな」
思わず地雷を踏んでいた。まず、と焦る俺に。しかし意外にもスカサハは明朗に微笑み、言い直す。
「《私の名はスカサハ》。我が弟子の主上よ、此度の戦陣に私を加えるがいい。弟子に劣らぬ槍をお主の為に振るう事を約束しよう。――どうだ、こちらの喋りの方が好みに合うか?」
そうして。
魂の腐敗は無く。しかしてその武練に衰え無く。
美と武、知と魔。ありとあらゆる分野を極めた稀代の大魔女が、『人類愛』の許に参じたのである。
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