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人理を守れ、エミヤさん!
幕間「女王の狂乱」
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存在する全てのケルトの戦士が消滅し、再生する。



「ァアァアアァアアアアアアアアアアア――ッッッ!!」



 麗しの女王が、その四肢より、口腔より、双眸より鮮血を噴き出す。
 産み出されていくのは無尽蔵の兵力。加速度的に総軍を増す。聖杯の魔力が女王の力を増大させる。
 そして。
 ふつりと、唐突に女王は黙りこくった。

「……」

 俯く。陰が顔に掛かる。
 やがて肩を揺らし――女王は、

 嗤った。

「ふ、」

 嗤った。

「ふふ、」

 嗤った。

「ふふふふふふふふ」

 あははははははは!

 狂ったように笑い転げ。笑って、笑って、狂気に染まる憤怒の凶相で、女王は聖杯を掴む。

「――……だれが、やったの……?」

 ぽつりと、呟く。

「だれが……だれが……」

 答えは誰も持たない。

「……」

 故に。

「しょうがないわね」

 彼女は、呟いた。満面の笑みで。

「しょうがないから、わたし、おうさまがおきるまで……おうさまのかわりに、やるわよ」

 霊基が歪むほどの怒りの感情。
 誰かが言った。ほんの、ささやかな。取るにたりない人間が。
 人間が持てる感情の総量には限度がある。感情を抱ける許容値の限界は、脳にある。それを越えてしまうと――人は、狂うのだと。
 女王はそんなものは知らない。知っているのは、鉄心の男だけ。

「さーヴぁんと……もっと。もっとよびだしちゃうわ」

 聖杯の理を、聖杯で歪める。狂気に任せ。
 数多の戦士の恋人にして母である女は。

「うふふふ……たくさん、うむから」

 サーヴァントを、《産む》。

「あははははは!」



 ――殺してやる。



 今まで。
 ただの一度だけ懐いた、掛け値なしの本気の殺意。
 クー・フーリンにだけ懐いた、天井知らずの殺意。
 クー・フーリンをも破滅させた女王が、今。これまで、お遊びめいていた女王が。

 本気に、なった。











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