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人理を守れ、エミヤさん!
グレートプレーンズだよ士郎くん!
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あ、真名も伝えていいか。……沖田総司には俺の状態は誤魔化してある。体は弱いのに情が強いからな、変に心配させたくない。シータはそもそもエミヤシロウという名を知らない。『フィランソロピー』には指導者がこんな様なのを知られる訳にはいかない……理由としてはこんなものだ」
「……分かりました。私の所で伏せておきましょう」

 適切な理由かどうかは、俺にも判別はつかない。私情が入っていないか問われたら、確信を持って頷ける自信もなかった。
 単なる格好つけかもしれないが、確かに合理的ではあるはずだ。自分自身の名前に意味を見いだせないのだから、必ずしも重大な欠陥ではないはずである。
 しかしアルジュナは言った。

「ただ、」
「?」
「……そうですね。貴方の麾下にある者の中で、特に戦う力の弱い民、そして兵に伝える必要はないかもしれませんが、しかしサーヴァントにだけは伝えておくべきでしょう」
「……何故だ?」
「名というのは、誇りだからです」

 戦士らしい思想だった。

「名は体を表すといいます。穿ったものの見方をするなら、己の体を構成する名は、レゾンデートルになるという事でもある。自らの名に誇りを持たない戦士はいない。それは自己顕示欲によるものでもありますが、何よりも自らの骨子を確立するためでもあるのです。マスターの持つ欠陥は伏せても構いません。しかし、記憶の欠落によって実感が持てないというなら、尚更日常的に名を呼ばせるべきでしょう。自らの名は、己の行いと存在に誇りを持つ為の基点となる」
「……そうか。確かにそうかもな」

 言われてみればその通りだとも感じる。
 身近なサーヴァントの為とは言わず、自分自身の為であると説くアルジュナに頷かされた。
 納得は出来る。俺は俺の足跡に誇り……というのはニュアンスが異なるかもしれないが、自信と自負は懐いている。それを見失わない為の名前……。
 カルデアと合流するまで『ジャック』という名を改める気はないが、『エミヤシロウ』という本来の名を捨てていい理由もなかった。俺はそこに気づかせてくれたアルジュナに感謝する。

「ありがとう。助けに来てくれたのがお前でよかったと思う。これからも宜しく頼むぞ」
「はい。私も力量の高い戦士であるマスターを得られてよかった。先程の射は実に見事でした」

 一線を引いた先で微笑み、アルジュナは一礼すると踵を返す。見張りをしておきます。敵が来ましたら撃退しておきますので、どうぞごゆるりと、と。そんなふうに颯爽としていた。

「……ああ、やっぱりお前も癖がある」

 苦笑する。珍しくもない、屈折した人間。そうした人間にばかり数多く縁があった。だから――まあ、アルジュナは至極分かりやすい。
 何せ完璧過ぎるのだ。第一印象から一貫する、サーヴァントとし
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