黎明、死闘、そして邂逅
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、その力の真名は。
「『梵天よ、汝を讃えん』――!」
神弓が軋むほどの大破壊の咆哮。奔った熱線は核兵器にも比する窮極の灼熱。
上空目掛けて放たれたそれは、過たずクー・フーリンを捉えた。直撃を受けたクー・フーリンの背後、曇天を貫き日輪が姿を現す。
射殺した、これを受けて滅びぬモノなど有り得ないと誰しもが確信するだろう。
事実手応えあった。アルジュナは莞爾とした笑みを浮かべるも――しかし、その美貌が強張った。
アルジュナの奥義を受けて、遥か彼方に墜落した魔性の神性は、
生きていた。
手傷は負っている。全身に大火傷を負っている。
しかし彼は太陽と、光を司る神の子である。その炎熱への耐性は元々高く、神性を解放した今の姿では、殆どの熱の損傷を遮断してしまえるのだ。
それでもなお大火傷を負ってはいるが。純粋な物理面での重傷もあるが。
しかし、生きていた。
二本の脚で着地した凶獣は、黒い尾で軽く地面を叩く。それだけで地面が陥没した。
ゆっくりと魔槍を旋回させている。その眼は授かりの英雄アルジュナを真っ直ぐに捉えていた。
屈辱に、アルジュナは顔を歪める。己の奥義を受けてなお、戦闘の続行に支障を来していない強大な化け物に矜持が傷つけられたようだったのだ。
クー・フーリンが猛然と駆け出す。一瞬にして彼方より接近してくる英雄の成れの果てが、異形となった姿で駆けてくる。
ジャックは絶望しそうになった、しかし絶望はしない。諦めそうになった、しかし諦めない。担い手の魔力を吸って凶悪さの増した魔槍を、光の御子は今に擲たんとしている。反撃のそれ。重傷を負っているとは思えない、全く鈍っていない体のキレがある。
「――来るなら、来いッ!!」
ジャックは吼える。しかし――狂王の姿が忽然と、
消えた。
「は?」
見失った? 慌てて周囲を見渡すも、どこにもその気配がない。絶望的な死の予感がない。アルジュナすらクー・フーリンを見失っていた。
『フィランソロピー』が狙われたのか? マズイ、とそちらに視線を向けるも、血風はまるで吹いていなかった。
唐突に、クー・フーリンは消えたのだ。
思わず呆然とする。何があったのか皆目見当もつかない。そんな彼らの耳に、爽やかで穏やかな声が届いた。
「――なんとか間に合ったね」
いつの間にやら、側にいたのは白いフードを被り、足元に花を咲かせている青年だった。
「ちょっとうたた寝しながら歩いていたら、そこは見知らぬ荒野の国。これは夢の続きか、それとも単なる幻か。まあ、どちらでもいいのだけどね」
呑気に言いながらも、しかし冷や汗を顔に浮かべている。
「おはよう。
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