黎明、死闘、そして邂逅
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ついてこれない身で何をと思う。
しかしアルジュナは気高く、誇り高い戦士だった。指示に従い大規模の射撃を控え、只管に天地を自在に駆け回り、アルジュナを抉らんとするクー・フーリンに速射を続けた。
ジャックは眼を凝らし続けている。黒弓に選定の剣を番え、明後日の方角に狙いを定めた。クー・フーリンはそれを視界に捉えている。阿呆が、テメエなんざに捉えられるとでも思ってんのか、と。
――捉えられた。
精神統一。射法八節。
一節、足踏み。
二節、胴造り。
三節、弓構え。
四節、打起し。
五節、引分け。
六節、会。
七節、離れ。
八節、残心。
カルデアのクー・フーリンの動きと、アルジュナの矢と動き、視線と射戦を擦り合わせ、あらゆる経験を総動員して造り上げるのはイメージだ。矢は放つ時には既に中っているもの。彼の弓術の根源にある心得をなぞり、選定の剣を射ち放ち。
剣弾が弦より離れた瞬間、残心を取ったジャックの眼は捉えていた。クー・フーリンを、ではなく。その身が駆け抜ける空間を。そして彼が放っていた選定の剣が、眩い火花と共に打ち払われたのを。
「――チィッ!」
「お見事!」
クー・フーリンは瞠目した。まさか中る軌道に剣矢が『置かれている』とは。咄嗟に魔槍を振るって剣弾を弾くも、弓手の残心の瞬間にそれは自壊して炸裂していた。
その爆裂をまともに食らう。しかし凶獣は健在。
授かりの英雄はその絶技に感嘆しながらも、その機を逃さなかった。付かず離れずの接近戦による弓術を使っていたアルジュナは、大規模な爆撃を受けてよろめいたクー・フーリンの胴を蹴り上げた。
遥か上空まで蹴り上げられたクー・フーリンを狙うはインド最強の英雄の奥義。
片膝をつき、一瞬にして魔力を充填した彼は、地上の太陽の如き光を発した。クー・フーリンはルーンを展開する間がなかったのか、それとも手持ちのルーンが尽きていたのか、防禦体勢を取るのみだった。
猛り昂る灼熱の魔力の奔流。それこそは対国宝具。
授かりの英雄アルジュナが――あらゆる神々の寵愛を受けた、英雄となる道を定められた青年が――唯一何者からも授けられたのではない、無二の奥義。己が研鑽によって掴み取った矜持の究極。
神弓『炎神の咆哮』より解き放たれる炎熱の蒼矢が、『マハーバーラタ』最強の一角の弓術を後押しする。自らの力で成し遂げたものなど何もないと、クシャトリヤ足るアルジュナを侮辱した凶獣を滅さんと全身全霊を賭した。
いざ見るがいい、これが貴様の侮った授かりの英雄の力だ。そして観るがいい、これが貴方が手に入れた戦士の力だ。凶獣よ、滅しろ。マスターよ、畏れよ。アルジュナの骨子となる力の根幹
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