黎明、死闘、そして邂逅
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外気に触れて燃えたのだ。
パかッ――と。額が割れる。割れた額からも血が溢れ、しかしそれは光の環を象り王冠となった。眩く照り輝く、実体のない光の冠……。その下で不気味に光輝く真紅の双眸が、左右で十四の瞳を宿す。
全身から止めどなく溢れる鮮血は、眩い炎となって狂王の体に纏われた。太陽の属性を有した神聖なる破滅の火――見上げるほどの異形の巨漢へと変身した光の御子は、ありえないほど凪いだ瞳をしている。
「ァ……」
鉄心の男が、喘ぐ。
それこそは――アイルランドの光の御子クー・フーリンの最終宝具。『捻れ狂う光神の血』。別名、捻れ痙攣。
視た敵対者は誰一人の例外なく葬り去った、光の御子の最強形態。担い手の形態移行に呼応して魔槍は更に長大に、更に凶悪に棘を伸ばし、穂先も二又に変じていた。
マスターという存在である故に、ジャックはその宝具のランクを観測できてしまう。
評価規格外。対自己宝具。
その身に流れる光の神ルーの血を覚醒させ、魔性に近い神性を解放させるもの。筋力と敏捷、耐久と魔力の値が評価規格外となっていた。
神性もまた、半神の枠を超え神霊の域へと踏み込んでしまっている。
別物だった。
ただでさえ強大だった狂王が――以前視た、二十八の魔神柱を超える化け物へと姿を変えている。
今までに視たあらゆるものが、芥のようだった。
第三特異点の、魔神霊となったアルケイデスすら見劣りする。圧倒的な――死の化身。
視たものは死ぬ、避け得ぬ結末が形となって其処にいた。
「ぁガッ、ゴホッ! カ、ハッ……」
沖田が唐突に膝をついて、血反吐を嘗てなく吐き出し倒れ伏す。
「春!?」
クー・フーリンに一瞥されただけで、沖田は戦闘不能となった。痩身を痙攣させ、沖田が血泡を吹きながら意識を失う。
邪視。
光の御子の裡に流れる邪神バロールの血によって、その視線に晒された者は高い対魔力か魔眼への耐性、外界への護りがなければ体を凝固させられてしまう。沖田の対魔力では、狂王の一瞥にすら堪えられず、その視線のショックのみで体の自由を失い、呪いじみた病の発作を起こしてしまったのだ。
ジャックは外界への守りである赤原礼装を、バンダナとして身に付けていた。故にその凶悪な視線の難を逃れられたのだ。
「死――」
凶獣の姿が掻き消える。瞬間、アルジュナが数条のミサイルめいた蒼矢を放った。無防備に倒れ伏した沖田の近くと、ジャックの鼻先を掠める眼前へ。
「――ね」
凄絶な火花が散る。沖田を突き刺す槍、ジャックを貫く槍。その二撃を、二撃とも阻んだのはアルジュナの蒼矢だった。神速で奔った魔槍へ正確に矢を射込む技量はまさに神域の武。
それで、クー
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