黎明、死闘、そして邂逅
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
リンの相性は最悪なのだ。生半可な射撃は全く通じず、接近戦に縺れ込んだら瞬殺される。最大威力の螺旋剣の投影も通じない。『無限の剣製』を弾丸に込めて放ったとしても、直撃させるのは至難の業。ほぼ確実に回避されるだろう。沖田もまた、この暴虐の獣からマスターを護り切れる自信はなかった。
「助太刀感謝する。俺はジャック、あそこの連中の領袖をしている。コイツがアサシン。あっちの娘がアーチャーだ。アルジュナ、助かったぞ」
「ご丁寧にありがとうございます。して、この者は? さぞ名のあるサーヴァントでしょう」
「クー・フーリンだ」
「――ほう。なるほど……」
その真名に、アルジュナは微かに眉を動かす。しかしそれだけだった。
「道理で手強そうな訳です。手加減は無用のものと心得ましょう。それに――あのものから感じるこの力、今の私では些か心許ない。マスター、不躾ながら私と契約して頂けますか?」
今の、とは。マスターのいないはぐれ状態だからこその言葉である。アルジュナの方から契約を持ち掛けられ、ジャックは一応訊ねる。
「……いいのか?」
「ええ、是非。助太刀に参じていながら無様に敗北する醜態は、私としても晒したいものでもない。恥というものは弁えています」
一瞬足りとも、アルジュナはクー・フーリンから眼を離していない。微かな動き一つで戦闘を開始できる体勢を崩していなかった。
真名を知らずとも、その姿を見ただけでアルジュナは一寸も気を緩められないと悟っていた。しかしそれでも彼の余裕に翳りはない。如何なる強敵が相手でも――それこそ自身より強いモノが敵であっても、アルジュナの余裕を剥ぎ取る事は出来ないだろう。それが叶うのは、彼の宿敵のみである。
ジャックはクー・フーリンを見るも、狂王は動く素振りを見せなかった。あたかもジャックがアルジュナと契約するのを待っているような……。戦いに際しては慢心も、遊びもない敵が『見』に徹している様は、ひどく不気味に映る。何を考えている、とジャックは考えながらも、アルジュナにパスを通じさせた。
破損聖杯の魔力供給率の、およそ半分が一気に持っていかれる。アルジュナを加えてもまだ三騎は余裕を持って契約出来ると踏んでいたが、これでは後一騎を加えるのが精々だ。ジャック自身に魔力を供給しなかったなら、もう一騎追加出来る。
沖田、シータ、アルジュナ。ジャックの戦闘力を維持するなら後一騎が限度で、戦闘の力を放棄するなら更に一騎。アルジュナ級であろうラーマを計算に入れてのものだが……皮算用だ。
「――随分と大食いなんだな」
「失礼しました。よもや貴方がこの私の全力を支えられるマスターとは思いもしませんでした。ご安心を。出費に見合う力は示してみせましょう」
涼しげな表情で大半の魔力を持っていったア
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ