人類愛の黎明
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れる魔槍に、ジャックもまた即座に応じて呪文を唱える。
「I am the bone of my sword.」
「『抉り穿つ鏖殺の槍』」
「――『熾天覆う七つの円環』ッッッ!」
弓なりに逸らした体から、擲たれる必殺の槍。
展開される薄紅の七枚楯。花弁は七枚の円環を顕し担い手を護る最強の楯として顕現した。
なんだと? 凶獣が訝しむ。自身の槍が激突するや膨大な魔力の余波によって周囲の地面が抉れ、竜巻の中心に置かれたような暴風が撒き散らされているのを見て我が目を疑ったのだ。人間が展開した楯が、自らの槍を止めている――
薄紅の花弁に注ぎ込まれるは破損聖杯から供給される無尽蔵の魔力。投擲物に絶大な防御力を発揮するそれが、魔槍の侵攻を阻んでいるのだ。花弁を次々と破壊し、最後の一枚となるが、それを突破できない。
本来なら確実に破壊されていただろうアイアスの楯は、破損聖杯による膨大な魔力の後押しがあって、遂には恐るべき魔槍を防ぎ切る。充填された魔力を枯渇させた魔槍が担い手の元に帰還していった。――その直前。上空に跳んでいたクー・フーリンが着地する前に、得物を手放していたクー・フーリン目掛けて沖田が斬り掛かっていた。
しかし、来るのは分かっていたと言わんばかりに、クー・フーリンは虚空にルーンを刻んで足場とした。それを踏んで更に高く跳んだクー・フーリンに、羽を持たない沖田は歯噛みする。
「くっ……!」
跳んで追えば、縮地は使えない。自身の剣の技量は地上でなければ十全に発揮できない。故に空中は死の空間。まんまと仕切り直したクー・フーリンは、魔槍を手に着地点を定め――瞬きの間もなく十八のルーンを辺りに散りばめて結界を作った。
「『羅刹を穿つ不滅』!」
座して待つのをよしとしなかったシータが、クー・フーリンが虚空に跳んだ事で、自身でも狙えると見た瞬間に宝具を放ったのである。
それは確実にクー・フーリンへ直撃するはずだったが、それすら上級宝具の一撃をも凌ぐルーンの結界に阻まれる。
シータを一瞥したクー・フーリンは、肩で息をしているジャックを見た。
「――テメェ、オレを知ってやがるな?」
確信の籠った問いだった。
「でなけりゃあこうもオレの出鼻を潰せる訳がねぇ。チッ、メンドクセェな」
問いでありながら、しかし彼は答えを必要としていない。既に確信しているのである。あの眼帯の男は、このクー・フーリンを知っているのだと。
さもなければ、全力で放ったクー・フーリンの槍を一撃だけとはいえ防げるはずもなく、魔槍の全力投擲を凌げるだけの楯を咄嗟に取り出せる訳もない。
煩い蠅に、しぶとい雑魚に、
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