人類愛の黎明
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ない。
宝具も使えない。砦が近いのだ、あそこにある物資を台無しにする訳にはいかないのである。そしてシータを殺される訳にもいかない。今後どんなに強大な力を持つサーヴァントを仲間にしても、彼女の火力は不可欠なのだ。殺されるビジョンしか浮かばない戦いに投入するのは愚行だ。
やるしかない。ジャックと、沖田だけで。
――勝てるのか?
あのクー・フーリンに。
――春に長期戦は不可能だ。逆に奴は短期決戦から長期戦にも対応できる。奴の魔槍を俺と沖田は躱せない。春が勝るのは剣の技量と縮地による機動力だが、それ以外は全て劣っている。俺の剣弾は矢避けの加護を突破できない、銃撃も同様。接近戦を挑めば防げて一合。奴に宝具を使わせず、俺が弓で宝具を撃ち、春が抑える、それしかないか……ッ!
勝てるかどうか分からない、しかし勝つしかない。さもなければ全員殺されるのだ。それだけの殺気がある。力がある。
ジャックは双剣銃を消し、黒弓を投影した。螺旋剣を弓に番え、狙いを定める。すると、不意に聞き慣れない声が聞こえた気がした。
カルデアのマスター。堪えてくれ、少しでいい
咄嗟に振り向く。しかし其処には誰もいない。幻聴か――? 沖田が苦しげに呻いているのが聞こえ、正面に向き直る。
躊躇う素振りすらなく縮地を行い、沖田は瞬間的にクラスが不明なクー・フーリンの背後を取っていた。振るわれる魔剣使いの斬撃。怜悧な太刀筋は斬鉄すら成すだろう。沖田は確信した。反応が遅い、斬れる、と。しかしクー・フーリンは無造作に尾を振るい刃を逸らした。神獣クリードの尾に刃を逸らされ沖田は愕然とする。対魔獣の経験などないが故に、人が相手なら確実に斬れていた間を外され一瞬の驚愕に囚われてしまったのだ。
振り向き様にクー・フーリンは小蠅を払うように槍を振るった。苛烈な殺気に澱んで見える槍の一閃。振り向き様のそれは、沖田の硬直を確実に捉えていた。下がれば死ぬとその心眼が告げている、沖田は刹那の判断で後退ではなく前進を選び――
「ガッ、」
槍の柄を横腹に受ける。楯とした鞘が砕け、槍の柄が沖田の胴にめり込んだ。ばき、と骨の砕ける音がする。沖田が吹き飛んだ。地面を転がって、なんとか跳ね起きるもクー・フーリンの姿がない。何処に、と視線を彷徨わせ、ジャックが吼える。
「上だッ!」
「――ッ!?」
槍の穂先を真下に向けた光の御子が落下してくる。沖田は再び縮地で間を外し、そこにジャックが投影宝具を撃ち込んだ。偽・螺旋剣。周囲の空間を捻り切りながら迫るそれに、クー・フーリンは微かに眼を瞠るも――それだけだった。
地面に片手の掌を叩きつけ、ルーンが光る。すると着弾寸前の螺旋剣が分解され、消えた。ジャックは瞠目する。
――ア
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