人類愛の黎明
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やって?
策を練っていると、不意に目の前を一枚の花弁が過る。
「?」
白い花びらだ。花なんて咲いていたか? そう思い視線を取られる。花びらは風に乗ってひらひらと舞って、俺の死角である左後方に流れていって――
微かに隠密の解れた、黒フードを被った槍兵が迫りつつあるのを見咎めた。
「ッッッ!?」
その槍を知っている。その顔を知っている。その腰に生えている黒い尾を知っている。
あらゆる動揺を押さえつけ瞬時に叫んだ。
「左後方、八時の方角だッ! 撃てェッ!!」
兵士達は素早く応じて銃口ごと振り返り、即座に姿の見えないモノに弾幕を浴びせる。轟く銃声、しかしそんなものがなんの意味もないとジャックは知っている。
案の定、あらゆる弾丸はその槍兵に着弾する寸前、自分から外れていく。あたかも弾丸そのものが、その槍兵を恐れるように。――《矢避けの加護》だ。
沖田が刀を抜く。行けッ! 吼えていた。応じて沖田が馳せる。黒い槍兵は舌打ちして姿を現した。ルーン魔術による隠密、そしてそこからの奇襲。それが成らなかった故に姿を隠す意義がなくなったから。
「……気づかれたか。今のは夢魔か? チッ、邪魔な輩が混じってやがる」
――彼の者こそ槍兵、剣士、騎乗兵、魔術師、暗殺者、狂戦士に適性のある神話の頂点に君臨する半神半人。半神でありながら神々の軍勢を相手に単騎で挑んで破った無双の超人である。
彼の真名はクー・フーリン。
アイルランドの光の御子。
――敵はケルトだった。だから、もしかしたらいるかもしれないとは思っていた。だがその可能性は意図して考えないようにしていた。
本当にいるとは思いたくなかったのだ。
その力を知っている。敵に回せば何より恐ろしい、あらゆる戦局に対応する戦場の万能者、戦場王とも讃えられる武勲の大戦士。授けられたものではない、善悪をも超えた武練を誇る存在。そして、共に戦場を駆けた頼もしい相棒。
理屈を越えて、戦いたくない相手だった。
だがその英雄は、明確な殺意を持って襲い掛かってきている。故に、あらゆる感傷は無用。友だろうが、恋人だろうが、無力な子供だろうが。敵となれば、命令があれば、私情を殺して任務を果たす男で――敵として立ちはだかったなら、敵としてしか相対できない男だった。
故にジャックの決断は早い。
「総員後退! カーターに合流しろッ!」
「BOSS!? しかし……!」
「邪魔だと言ってるんだ! 奴を相手に数で挑んでも無意味だ、対多数戦闘のスペシャリストだぞッ! 命令だ、早く行けェッ!!」
部下を去らせる。シータが駆けてこようとするのを止めた。彼女の戦闘能力では一刺しで殺される。天地がひっくり返っても絶対に勝て
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