覚悟を決める時だジャックさん!
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。死んじゃったんならクーちゃんの言う通りだし。今の私にはクーちゃんがいるし」
「フィンの所の一番槍はどうした?」
「生きてはいるみたいだから、そのうち戻って来るんじゃないの? 話を戻すけど、兵も結構な数が死んでるわ。総軍で見れば誤差の範囲だけど、補充ばっかりしてたら指が痛んじゃいそうで嫌になるわよ」
「――要は目障りな奴を消しゃあいいって訳だ」
言って、狂王は玉座から立ち上がった。
腰の重い王ではない。出陣するのに惜しむ労はなく――元よりケルトが誇る『最強』はこの凶獣なのだ。
何よりも冷酷に、確実に敵を殺す事にかけて、狂王クー・フーリンの上を行く者などいない。
しかしふと、彼は振り返ってメイヴに訊ねた。
「メイヴ。師匠はどうした」
「あの女? ごめん、逃がしちゃったわ」
「……そうか」
生前のメイヴが、クー・フーリンを倒すためだけに用意した切り札、二十八人の怪物。その枠に魔神柱なる魔術王の走狗を無理矢理に押し込んだモノを投入してなお、クー・フーリンの師であるスカサハを討つには至らなかった。
負けたのではない、逃げられたのだ。メイヴはあの女が目障りで……裏切ったのなら殺してやろうとしたのだが。やはり一体に統合せず二十八体の魔神柱にしたのは失策だったかと人知れず唇を噛む。次は一体に統合してから投入しようと反省した。
「師匠の事はいい。見掛けたら殺しておく。それよりだ、小僧と竜殺しを殺った奴が何処にいやがる」
「ちょっと待ってね、クーちゃん。視てみるから」
促され、メイヴは宝具を使う。
それは未来視である。その真名を『愛しき人の未来視』という。
生前の恋人の一人、アルスター王コンホヴォルの持つ未来視の千里眼を一時的に、限定的に借り受けるもの。それで朧気な未来を視たメイヴは清楚に、しかし邪悪に嗤った。本来の持ち主ではない故に、明確な未来は視えず、また遠い未来は視えないが、今回は視る事が出来たのである。即ち、
「だいじょーぶよ、クーちゃん。クーちゃんの行き先に『敵がいるわ』」
「そうか。ならいい。行ってくる」
「行ってらっしゃい私の王様。でも――」
踵を返して鏖殺の獣が歩んでいく背に、淫蕩の女王は甘く語りかけた。
「『あの宝具は使わないでよ?』今のクーちゃんが使うはじめては、私のこの目で絶対見たいから」
「は」
失笑したのは、クー・フーリンだった。
「オレの知り得る限り、世界最高にろくでもない力だ。そうおいそれと使えるかよ」
あらゆる無駄を削ぎ落とした彼には、本来発動させる事が叶わぬ血の昂り。英雄光の解放は、二十八の怪物の枠に押し込められた魔神をも超えるもの。生前の彼が変貌する真の姿。
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