EX回:第75話<もう一つの最前線>
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その後姿を見ながらブルネイは続けた。
「お前と吹雪を見て思ったが……」
「……」
私は無言でブルネイの顔を見た。彼は遠くを見るような目をして続けた。
「艦娘たちに構えて接するよりは、ごく自然に、やりたいようにさせるべきだったな」
「……」
その問い掛けには何とも返し難かった。それでも少し考えてから私は答えた。
「いや、でも私自身、果たしてそれで良かったのか? と思うな。結論は出せないよ」
ブルネイは穏やかに、しかし力強い口調で言った。
「だが、この悲しみもいずれ消えていくだろう。新レシピは順調だ。ここから新しい歴史が始まるんだよ」
「そうだな」
彼の自分に言い聞かせるような言葉には私も救われる心地だった。
(私たちの『未来旅行』は一つの戦場に『終止符』を打つ、きっかけになるのだ)
そこでブルネイの表情が少し変わった。
「ただ」
「あ?」
「美保の艦娘たちには、だいぶ衝撃だったらしいな」
「あぁ」
彼にも分かっていたか。
「ちょっと心配だな」
「……」
私は頬に手を当てて間を置いた。
(確かに、この展開には衝撃を覚えるかも知れない)
そのとき日向と並んで近くから見ていた伊勢がボソッと呟いた。
「あたしも、あんな風に、なっちゃうのかなあ?」
すると直ぐに腕を組んだ日向は応えた。
「分からない。だが、そうはさせない」
彼女の表情は硬かった。しかし決意は伝わってきた。
(気持ちは分かるぞ日向。その姿勢は、お前らしい)
……とはいえ実際、どうなのか?
正直、試作型の艦娘の寿命は分からない。まして彼女たちは不安定だ。
この伊勢や比叡2号たちが抱えるものは目に見えない時限装置のようなもの。その結果は私たちはおろか専門の技師にすら分からない。
「でも負けてはいけない」
私も呟いた。
(そうだ。最後の戦場は、まさに私たちの心の中にあるんだ)
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