暁 〜小説投稿サイト〜
人理を守れ、エミヤさん!
希望の欠片だジャックさん!
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か? それよりお春は俺より耳がいいはずだな。何か聞こえないか?」
「? んー……特に何も……あ、待ってください、何か聞こえます」

 サーヴァントである沖田の五感は、視力以外は俺よりも優れている。何か聞こえたような気がするが、気のせいであるかもしれない。
 なので念のため確認してみると、沖田は怪訝そうに耳を澄ませ、耳に手を当てた。案の定、何か聞こえたようである。むむむ、と唸りながら沖田は目を閉じ、不確定ながら報告してくる。

「なんか……女の子? と、男の人の声がします」
「……春。ここはどこだ?」
「? 広野の先に何故かある不思議な森です」
「着眼点はおかしいが、大方合っている。だが……人の住める場所か?」
「……あ、そういう事ですか……」
「そういう事だ。人の声がする、それは普通ありえない。ありえないのにあるという事は、つまり某かの異常事態と見るべきだろう」

 沖田の顔に理解の色が浮かんでいる。
 頷いてみせ、先を急ぐ。やがて俺の耳にも声がはっきり聞こえてきた。それを頼りに気配を殺して走っていく。森の中を数百メートル走っていると、すぐに開けた空間になる。森というよりは林だったようだ。
 少女が、大声で喚いて暴れている。筋肉質で褐色の肌をした、金髪の大男が少女を縛りあげて肩に担いでいた。

「あの男は……」
「知ってるんですか?」

 ああ、と頷く。フェルグスと同じで、よく知っていた。

「ベオウルフだ」

 赤原猟犬のオリジナルを持つ英雄。
 体に無数の傷を持つその男は竜殺しでもある。武勇に秀で、武器を使うより格闘戦を好み、実際素手の方が強い。
 俺は二人を観察した。ベオウルフの肩に担がれているのは、小柄な少女である。燃え上がる火焔のような髪を頭の両サイドで纏め、少女然とした華奢な姿には似つかわしくない凛とした雰囲気がある。
 そして……衣服は殆ど身に付けていない。相手はベオウルフだ、戦闘を行ったのだとしたら、かなり激しくなり衣服が破れてしまったのかもしれない。ベオウルフは婦女子に乱暴する下衆ではないから、衣服が破けるとしたら戦闘以外には考えられず、あの二人は敵同士という事になる。現に険悪な様子だ。少女からは殺気すら感じられる。

 俺は目を凝らし、二人の口の動きを読んでやり取りを盗む。

「……ベオウルフは、ケルト側か」

 ベオウルフは少女を倒し、アルカトラズ刑務所に収容するつもりのようだ。……この時代にアルカトラズ刑務所はなかったはずだが……やはり先程の推測は正しいのかもしれない。さもなければおかしい。
 ベオウルフが敵なのは痛い。味方ならよかった。だが敵だというなら是非もなし。あの少女もサーヴァントだ。救い出せば力になってくれるかもしれない。ならば――仕掛けない理由などなかった
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