要観察対象ジャックさん!
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れない。餓えているかもしれない。
そんなものだ、人間なんて。――だったら誰を、どうすれば救う事になるのか。その穢れを拭い去った事になるのか。考えて、考えて。
決めつけるのではなく、己の心に従う道を見つけられた。分からないなら問い掛ける事にした。
俺だって人間なんだ。全知全能の神様なんかじゃない。救いの手を差し伸べても、余計な事をするなと払いのけられるかもしれない。しかしそれでいいのだ。
何をしても感謝される奴なんていない。例えどれだけ徳を積み、善行を重ねようが、知らないところで怨まれたりもする。救ったはずの人が巡り巡って悪行に手を染める事だって有り得るのだ。
なら、力んだってしょうがない。出来る事だけをしようと、自身の裡から生じる衝動に折り合いをつけられた。
――地響きが、する。
悔いのない道を行き、人道のど真ん中、王道を敷いて心の命じるままに歩む。自己と他者を比較するのが人の性で、拭えない悪性なのだろうが、それを克服出来る人もいる。憐れまず、過去を見ず、欲に溺れず、比較せず。中庸の在り方で善を成す。
『人類愛』とは、我ながらよく名付けたものだと思った。食べ物、衣服、住居。人が心にゆとりを持ち、礼節を知るための三大要素全てが不足していながら、彼らは最低限のモラルを忘れなかった。生きる希望はある、絶対に生き残れる。その信頼が己に向けられるからこそ、人間の善性を保ち続けられているのは分かっていた。俺が死ねば、或いは抑えようのない被害が拡大すれば、その薄い善性は破れ、その裏の悪性が顔を出すと分かっていても。その儚い善性が眩しい。
広野を行く。見渡す限り、誰もいない。敵影は見えない。このまま何事もなくいけばいいと、願う事自体が愚劣極まる。
地響きがした。大地が揺れた。嗚呼――どうしたって、こうも上手くいかない。
魔神柱、顕現
「――」
地面を突き破り、舞い上がった砂塵の中に屹立する醜悪な柱。無数の瞳が、俺を見ている。
慮外の襲撃。完全な不意打ち。思考が止まる。驚く事すら出来ない。見た事もない化け物に、群衆の意識にも空白が打ち込まれていた。
膨大極まる魔力の塊。サーヴァント数騎分もの魔力の波動。それが――二体。
あ、と誰かが喘いだ。魔力を感じる事も出来ない群衆すら、途方もない天災を目撃してしまったのだと理解していた。
多数の眼球に、力が籠る。刹那、我に返った俺は直ぐ様号令を、
「ぎぃぃいいいい!?」
熱線が奔る。それが、群衆を穿った。肉片一つ残さず蒸発する多数の人々。
カッ、と視界が赤く染まる。俺を狙った視線の熱線は、咄嗟に飛び退いて躱せても――戦う術すら知らない人々に躱せるものではなかった。瞬間的に
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