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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
雪庇の毛布
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……テロリスト相手に逃げ惑って先公に助けられた軟弱な特組を俺らが鍛えてやるって言ってんだよ」
「いや、これから移動授業だし、そういうのは先生に話を通してからにしてくれ」

 クラス代表という事でうんざりした顔で天馬が言うが、相手の態度がデカい不良風の生徒はそれを鼻で笑った。

「馬鹿かよ。そうやって先公にビビってるから皇国に仇名すテロリストを撃退できなかったんだろ。恥なんだよ恥、お前らは。もし俺らが現場にいたら逆にボコして終わりだったんだぜ?」
「お前らが?そんな風に見えないけどな」
「俺らを見た目で判断しない方がいいぜ。どいつもこいつも簡単に人を殺っちまえる力を持ってんだからなぁ!!」

 エデンとしては彼の言っている事の1割も理解できない。だが彼に同行する男女数名は同意したり「言い過ぎだよ〜可哀そうじゃ〜ん」などと完全に特組側を格下扱いしている。何なのだろう、この人たちは。リック先生のフルスイング見た事あってこんなことを言っているのだとしたら多分病院に行った方がいいと思う。
 だってあの人無詠唱でビルディングを大気圏外までカッ飛ばしたんだよ?人間マスドライバーだよ?
 正気じゃないなと思っていると、魔鉄器の本を眺め続けている悟が小さな声で口を開いた。

「こりゃアレだな。無敵病だ」
「ナニソレ?」

 聞いたことのない病気だな、と思っていると、永海が「中二病の仲間みたいなのだよ」と教えてくれる。

「鉄脈術を使えるようになって、超人的な力を使えるようになるだろ? そうするとなんつーか、万能感ってやつに満たされて今の自分は何も怖くないって妙な勘違いし始める時期が、製鉄師と魔女にはあるらしいぜ」
「当然と言えば当然の流れだな。特になまじ戦闘向けの力を持ってると、使いたくてしょうがない。訓練じゃ殺す気の力なんぞ出しても教師に止められるが、中には自分の強さをアホみたいに信じて教師を倒そうとする奴もいるらしい」

 加えるなら、契約を結んだことで苦痛から解放され、更に理解者を得るという製鉄師と魔女特有の心理的孤独に対する満足感も理由の一つらしい。同じ魔女なのにエデンが全く共感を覚えないのは、多分エイジが変な人なのと親が製鉄師と魔女だったからなのだろう。

「ていうかさぁ、お前は2年目だし知ってんだろ?先公の眼の届かない場所でのケットーは黙認状態だってのさ。要はやり過ぎなきゃいいんだよ。見てな、軽く撫でてやるよ」
「愚かな」

 空気が、凍り付いた。
 言葉を発したのは、天馬の横でずっと顔を伏していた朧だ。

「決闘の言葉の意味も知らぬ輩が、偶然手に入れた力に溺れて天狗になるとは……どうやら教育を施す親か教師に恵まれなかったようだな」
「はぁ?何言ってるか全然分かんねーけど、もしかしてそれ挑発のつもりなの?
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