第四章
[8]前話
そして翌朝寺の中を日の光を頼りにじっくりと見回ると。
寺の中にある墓場の端に多くの人骨があった、若い僧はその人骨の山を見付けて老僧を呼びそれを見て話した。
「これは」
「やはりな」
老僧は若い僧に強張った顔で答えた。
「あの鬼がだ」
「夜に襲い喰らった」
「寺にいた者達だ」
「そうでしょうね」
「あの鬼が何処からこの寺に来ていたかわからないが」
「夜にですね」
「この人達を襲い喰らったのだ」
まさにというのだ。
「恐ろしいことにな」
「そして我等も」
「若し毘沙門天のご加護がなければ」
その時はというのだ。
「まさにだ」
「この人達と同じ様に」
「ここに骨となっていたのかもな」
「そうなっていたかと思うと」
「御仏に感謝せねばな」
老僧は心から述べた。
「まことに」
「そうですね、では」
「うむ、今からな」
「御仏にですね」
「感謝の為に経を唱え」
毘沙門天、自分達を守ってくれたその仏にだ。
「それにだ」
「さらにですね」
「そしてだ」
「はい、この方々にも」
「成仏を願う為にもな」
「経をですね」
「唱えよう、それからだ」
そのうえでというのだ。
「この寺を後にしよう」
「それでは」
若い僧は老僧の言葉に同意して頷いた、そうしてだった。
本堂の毘沙門天そして鬼に喰らわれた人々の為に念仏を手篤く唱えそれが終わってから寺を後にした、寺を出て暫く歩いてだ。
老僧は寺の方を振り返ってこんなことを言った。
「助かったが」
「それでもですね」
「もうだ」
それこそと言うのだった。
「こうしたことはだ」
「二度とですよね」
「あって欲しくないものだ」
「拙僧もです」
若い僧はこのことも老僧と同じ考えだった、二人共まだ顔は恐怖で強張り顔の色は蒼白なままである。
「もうです」
「何があろうともな」
「こうしたことには出会いたくないです」
「まことにな」
こう話してそしてだった。
二人は旅に戻った、そのうえである時旅で出会った者にこの話をして今に伝わっている。但馬に残る古い恐ろしい話である。
守られた僧侶達 完
2018・10・12
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