第三章
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その鬼を見てだ、僧侶達はいよいよ震え上がったが。
何とか我を保ち必死に念仏を唱えた、だが鬼は二人のところに来た。二人はもう駄目だと思ったがそこで。
鬼が毘沙門天の像まで来た時に一瞬で、それでだった。
鬼が倒れた、それで僧侶達は鬼を見ると牛の頭が飛んでいて胴も真っ二つにされて血の海の中でこと切れていた。
その彼を見てだ、老僧が言った。
「まさかと思うが」
「はい、今一瞬ですが」
若い僧も述べた。
「毘沙門天の像がです」
「動いたのか」
「そう見えました、それで」
「鬼をか」
「退治したのでしょう」
「我等を救って下さったのだな」
二人はまだ毘沙門天の仏像にすがっている、恐怖のあまりすがらざるを得なくなっているのだ。
「そうだな」
「その様ですね」
「ううむ、まさかな」
「まさかといいますと」
「この寺に人がいないのは」
それが何故かというのだ。
「あの鬼が夜に出てな」
「寺にいる者達を襲い」
「喰らっていたのであろう」
「だからですか」
「この寺は結構立派だが」
それでもというのだ。
「人がいなかったのだ」
「鬼に喰われて」
「そうだったのだろう、しかしな」
「我等はですね」
「毘沙門天にすがり必死に祈った」
念仏を一心不乱に唱えてだ。
「そうしてだ」
「それによってですね」
「我等は助かったのだ」
「そうなのですか」
「おそらくだがな」
老僧は蒼白になったままの顔で若い僧に話した、二人共その夜は恐怖が残っていて碌に寝ることが出来なかった。
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