第二章
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二人の僧は本堂で休んだ、そうして夜も子の刻を過ぎた時にだった。
二人共異様な鼻息が寺の中の何処から聞こえてきた、それでだった。
その荒々しい鼻息を聞いて若い僧は自分と同じく目を覚ました老僧に言った。
「あの鼻息は」
「牛のものか」
「その様ですが」
「農家から逃げてきた牛か」
「それにしては大きいとも思いますが」
「では一体何であろうか」
老僧は若い僧に眉を顰めさせつつ言った。
「あの鼻息は」
「わかりません、ただ」
今も聞こえるその鼻息を聞きながらの言葉だ。
「何かです」
「こちらに来ているな」
「そうですね、どういうことでしょうか」
「あやかしか」
怪訝な顔でだ、老僧は若い僧に言った。
「若しくは鬼か」
「鬼ですか」
「そうだ、鬼がだ」
それがというのだ。
「来ているのではないのか」
「鬼がですか」
「それがだ」
「拙僧達のところに迫っている」
「そうではないのか」
「若しまことに鬼ならば」
そう思っただけで身体が震えた、それで若い僧は老僧に相談する様に言った。
「拙僧達はどうなるか」
「ここは何とかだ」
「はい、御仏にすがるしかないですね」
「そうだ、本堂に泊まってよかった」
老僧は今自分の判断が本当によかったと安堵していた、何かあった時は立派な仏像が揃っているここだと思ってだ。
「それならばだ」
「はい、これからですね」
「念仏、法華経を唱えて仏像にすがろう」
「そうしますか」
「そうだ、何とかな」
「それが一番ですね」
「今の拙僧達にはな」
こう言ってだ、老僧は必死に周りを見回した。若い僧も彼と同じ様にしてだった。荒々しい鼻息が近付く中で。
丁度二人が特によい仏像と言った毘沙門天の像を見た、それで二人で言い合った。
「毘沙門天だ」
「はい、この御仏ならば」
「拙僧達を救ってくれる」
「魔を降す御仏ですし」
「ここはだ」
「毘沙門天にすがりましょう」
二人で話してだった。
二人で美書門店の像にしがみつきそうしてだった。
法華経を必死に唱えた、すると。
遂に本堂に入ってきた、本堂の扉から差し込める月明かりに照らされているのは牛の頭を持った巨大な鬼だった。
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