第四章
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「お二人のお墓それぞれにね」
「そういえば時々二人で何処かに行っていたね」
ここで彦太郎はふと思い出した、その思い出したことはというと。
「日帰りで朝早くから。それで帰ってきていたね」
「新幹線で福岡まで行ってね」
「僕の実の両親のお墓参りに行ってたんだ」
「年に一度ね」
「それがだったんだね」
「お二人に約束していたの」
彦太郎の実の両親達にというのだ。
「貴方をしっかりと育てると」
「実のお母さんはわかるけれど」
「実のお父さんはよね」
「僕まで殺そうとしたのに」
「刑務所で死ぬ時にご自身の悪事の全部を懺悔したとこのことだ」
ここで父が彦太郎にこのことを話した。
「そしてだ」
「そのうえでだったんだ」
「お前のこと、お前の実の母親のことも詫びてな」
「死んだんだ」
「そして最期にお前の名前を呼んだらしい」
「そうして死んだんだ」
「確かにお前の実の父親はならず者でだ」
それでとだ、父は息子にさらに話した。
「どうしようもない人だったと思うが」
「最期の最期にだね」
「人間の心を取り戻してな」
「僕の名前を呼んで」
「亡くなられたそうだ」
「そうだったんだね」
「それでどうする」
ここまで話してだ、父は我が子に問うた。
「これから」
「これからっていうと」
「お前は実の両親のことを知った、ならどうする」
「どうするかっていうと」
「お前が決めることだ、何をするのかはな」
この世を去った自分の実の両親達に対してというのだ。
「これから決めることだ」
「そう言われたら」
「難しいな」
「うん、わからないよ」
「世の中こうしたこともあるのよ」
母は彦太郎のその顔を見て告げた。
「わからない、そうしたことも」
「そうだね、それを突き止めていくのが学問でも」
「わかることだけではないわね」
「そうだね、じゃあ」
「このことはね」
「僕自身が考えることだね」
「よくね」
「まずは仙台に戻れ」
父のこの言葉は落ち着きそして穏やかなものだった。
「そうしてだ」
「どうするかをだね」
「考えろ」
「そうするよ」
彦太郎は父に答えた、そしてだった。
その日のうちに一泊した、それから暫く両親にこの話はせず仙台において自分の仕事を続けていたが実家に戻ってから一ヶ月位してだった。
彦太郎は実家に電話をした、母が出たが彼はその母に言った。
「今度福岡に二人で行くの何時かな」
「まさか」
「僕も一緒に行っていいかな」
母にこう言うのだった。
「そうしていいかな」
「それが貴方がやることね」
「うん、いいかな」
「ええ、わかったわ」
母は受話器を持ったまま暫く考えた、そのうえで我が子に答えた。
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