248部分:そよ吹く風その五
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そよ吹く風その五
「確かに後片付けは全然してくれないけれど」
「それでよ」
また言う咲だった。
「その先生が巨人グッズというかゴミを少年の机の上に置いていったわけね」
「後片付けはいつもマネージャーだから」
真相が徐々にわかってきていた。
「酔って学校に入ってそれで私の机の上にいつものようにってやったんだって思うわ」
「成程な」
「どっちにしろまさに酔っ払いだな」
坂上も佐々も呆れていたがそれでも言った。
「門閉まってるからそこを乗り越えてか」
「よくそこで捕まらなかったな」
思えばその通りだった。普通は捕まるものである。
「まあとにかく謎は解けたけれどね」
「それはよしね」
奈々瀬と茜が言う。
「何事かって思ったけれどね」
「それでもね」
「お酒さえ飲まなくて後片付けしてくれたらね」
ふう、と溜息と共に言葉を出す明日夢だった。
「本当に最高なんだけれど」
「それで最低になってるんだな」
春華の言葉は容赦がない。
「よくある話だよな」
「とにかくこれで話終わったな」
野本が言った。
「じゃあさっさと戻るか。今日は朝から大騒ぎだったな」
「そろそろ先生来るわ」
恵美が皆に言う。
「だからね。席を戻してね」
「ああ。それじゃあな」
「ちゃんと戻してね」
皆こう言い合い席を元に戻す。そのうえで普段通りのホームルームを受けるのだった。朝から大変な騒ぎのあった一日だった。
「何だかよ」
「何?」
「梅雨があけてもうすぐ期末テストだってのによ」
放課後の学校の帰り道。正道は未晴と一緒に帰っていた。歩きながら彼女に言っていた。
「馬鹿騒ぎだったよな」
「朝のことね」
「そうだよ、それだよ」
やはりそれであった。
「ったくよ。何かって思ってたらよ」
「けれど誰も思わなかったのね」
ここで未晴は言うのだった。
「何がだよ」
「だから。少年が巨人ファンだって」
彼女が言うのはこのことだった。
「そのことは誰も思わなかったわね」
「それはな」
彼女のこの言葉に応える。顔は正面を向いていて夕焼けのその赤い中でだ。
「誰も思う筈もないしな」
「皆わかってるのね」
「そうだよな」
こう未晴の言葉に頷いた。
「あいつのことがな」
「わかってるっていうか信じてるのかしら」
「信じてるってか?」
「ええ。少年が言葉と違う行動はしないって」
彼女が今言うのはこのことだった。
「少年。表裏ないから」
「はっきり言えばそんな器用な奴じゃねえよ」
口は悪いがその通りだというのだった。
「あいつはな。そんな奴じゃねえさ」
「そうね」
それがわかっているのは正道と未晴だけではいのだった。
「それは皆がね」
「そうだよな」
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