245部分:そよ吹く風その二
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そよ吹く風その二
「こんなの。早く捨てないと」
「おい、クラスのゴミ箱に捨てるなよ」
「すぐに焼却処分にしようぜ」
皆もすぐに彼女に言ってきた。
「それで完全に灰にしてね」
「ゴミ捨てた後は手を洗って」
そこまで言う。
「とにかく。机は拭いておくから」
恵美はもうタオルを用意していた。
「オキシドールでね」
「御祓いしよう、御祓い」
「それもね」
五人組も動きだした。当然未晴も加わっている。
「お塩とかも用意して」
「とにかく少年」
凛がすぐに明日夢の側に来た。
「焼却場行きましょう。すぐにね」
「ええ、それじゃあ」
こうして明日夢は凛に付き添われそのうえで巨人グッズを持って焼却場に向かった。焼却場で全てを焼いている間に恵美が彼女の机をオキシドールで丹念に拭く。そのうえで五人組と茜が御祓いを行う。それが終わった時に明日夢が凛と共に帰って来たが茜は二人に塩をかけたのだった。
「これで全部いいわね」
「ええ。全く」
明日夢は口を完全にへの字にさせて言葉を出してきた。
「誰がやったのかしらね、こんな悪質なこと」
「とりあえず俺じゃねえぞ」
「俺でもないぞ」
男組が全力で否定してきた。
「巨人なんてよ。誰が」
「阪神ならともかくよ」
「私でもないし」
「私も」
女組でもなかった。
「言っておくけれどね」
「こんなことね」
やはり彼女達でもない。少なくともこのクラスの面々は虐めやこうした悪戯をする人間はいない。巨人ファンもだ。だからこそ皆否定するのである。
「じゃあ誰なの?」
明日夢はやっと消毒と御祓いが終わった自分の机に座ってから皆に尋ねた。
「皆じゃないっていったら」
「それが問題だよね」
加山が応えてきた。
「問題は誰がやったかなんだけれど」
「それだよな」
「このクラスの誰でもないのよね」
皆このことはよくわかっていた。
「阪神やヤクルトじゃないから」
「巨人」
誰もが忌々しげにこの名前を出す。
「巨人なのよね。問題は」
「あっ、そういえば」
ここで奈々瀬がしまったといったような声を出した。
「証拠。消しちゃったじゃない」
「あっ」
「確かに」
皆ここでこの大失態に気付いてしまった。
「少年、グッズもう焼いた?」
「今完全に灰になってるわ」
こう奈々瀬に答える明日夢だった。
「焼却場でね」
「メガホンも丁度来てくれてた業者さんに渡したし」
証人にもなっている凛も言う。
「あとはもう」
「まずかったわね。指紋とか残っていたかも知れないのに」
「机もね」
恵美が言う。
「オキシドールで椅子も何もかも拭いたし」
「何だよ、じゃあ自分で証拠消したのかよ」
野本は呆れた声で言ってきた。
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